天才発明系男子の過保護な愛情〜病弱な私との歪んだ未来図


紗雪モノローグ【体育祭が終わり、いつもの日常が訪れていた。あの日絡んできた女子達も何故か急にしおらしくなり、私と目も合わせようとしない。よくわかんないけど、穏やかな日々を取り戻せている。】

〇紗雪の教室 お昼休み

クラス女子「増村さーん、なんか呼ばれてるよー」

教室のドアの方を見やると、廊下から知らない男子生徒がこちらを見て微笑んでいる。

「イケメーン!」「あんなカッコいい人いたっけ?」と色めき立つクラスの女子達

紗雪「…あの…?」
イケメン男子「こんにちは、増村さん。俺は3年の秋永大地。突然なんだけど、体育祭で増村さんのこと好きになってさ。良かったら俺と付き合わない?」
紗雪「…へ?」

購買でパンを買って教室に戻る途中だった蒼空と谷尾君も廊下で大地の発言を聞く

教室全体「ぎゃあああああ!?」

紗雪モノローグ【どうやら穏やかな日々はあっという間に終わりみたいです】

大地「どうかな?」
紗雪「えぇ!?いやその、付き合うって、えぇと…」

蒼空が大地と紗雪の間に割って入ってくる
蒼空「ーーー断る!!」

紗雪「蒼空!?」
大地「いやいや、誰?俺は紗雪ちゃんに聞いてるんだけど?」
蒼空「紗雪ちゃん、とか馴れ馴れしく呼ぶな!」
紗雪「蒼空!先輩に失礼でしょ!」

蒼空「紗雪!こんなナンパな男と付き合うのか!?付き合うはずないよな?俺と一緒に医者になるんだろ?それが俺たち2人の夢だろ?その夢にコイツは必要か?いらないよなぁ!?」
紗雪の肩を掴んで揺さぶりまくる

紗雪「近いしうるさい!」

大地「へえー紗雪ちゃん、医者を目指してるんだ?」
紗雪「あ、はい。だからその、今は勉強を頑張りたくて付き合うとかは…」
大地「でも納得した。俺、体育祭の時に足をケガして救護テントに運ばれたんだけど、そこで紗雪ちゃんが凄い丁寧に処置してくれたんだ。"お大事に"って優しく微笑んでくれてさ、まるで白衣の天使だった。さすが未来のお医者さん!」
紗雪「え?未来のお医者さんなんて、そんなこと…えへへへ」
照れつつも喜ぶ紗雪を見て、蒼空はショックを受ける

蒼空「騙されるなよ紗雪!こんなやつはキミの夢の妨げにしかならないぞ!」
大地「俺から見たら君の存在のほうが紗雪ちゃんには迷惑にみえるけどな?」
蒼空「はっ、だったらどっちが紗雪にとって必要な人間かハッキリさせようじゃないか。」
大地「いいだろう、受けて立つ」

クラスメイトの注目を浴びまくりながら大地と蒼空はバチバチとにらみ合う。

紗雪モノローグ【なんか私の気持ちは無視で勝手にバトル始まったんですけどー!?】

◯ Round1
放課後 学校玄関にて
雨が降っているが、傘を忘れた紗雪が帰れずに困っている。

大地「紗雪ちゃん、傘忘れたの?よかったら入ってってよ」
紗雪「大丈夫ですよ!美月が置き傘貸してくれ」

蒼空「傘は所詮、守備範囲が狭く、結局肩や背中は濡れて紗雪は風邪を引いてしまうだろう。そこで開発したコレだ!」
カバンから見た目は普通のカッパを取り出す

蒼空「これは水滴飛ばしカッパだ。犬がブルブルと体を震わせて水分を飛ばすが如く、カッパ表面を細かく微振動させて水滴を振り落としていくんだ!」

蒼空が自分でカッパを着て雨の中校庭に出るが、カッパの振動が強くて周囲に水滴を飛ばしまくる

紗雪「ちょっと、蒼空!周り見て、周り!」
蒼空「ホラ見ろ、紗雪!雨の中でもこのカッパはこんなに濡れていない!」
教師「…ほお。濡れなくてよかったな、高瀬」
蒼空の飛ばした水滴を浴びてびしょ濡れの先生

蒼空「げっ」
教師「濡れなかったついでに一緒に職員室に来てもらおうか」
蒼空「そ、そんな...紗雪いいいいいいい!!」
首根っこを掴まれながら先生に連行されていく


紗雪は結局、美月の置き傘を借りて、大地とは別々の傘を使って一緒に並んで帰る事になった。

大地「彼…蒼空くんってなんなの?」
紗雪「さあ…私の身体が心配なのは分かるんですけど、意味不明ですよね。」
大地「…心配?なんで?」
紗雪「私、身体が弱いんです。」表情に影が差す

大地「なにか病気が?」
紗雪「いえ、体質です。小さい頃からずっとそうで、外出も制限されるほどでした。母が司書員だったので、図書館には毎日連れてってもらったんですけど、当時は外で遊びたくて抜け出したりもしました。結局倒れて入院したんですけど。」
大地「…大変な思いをしてきたんだね。」
紗雪「当時の事はあんまり覚えてないけど、その入院先のお医者さんに憧れたおかげで今、医者を目指してますから。これもご縁って思うようにしてます」
気丈に笑顔を見せる

大地「うん、俺も応援してるよ」
紗雪「ありがとうございます」穏やかに微笑み合う

〇ROUND2
数日後 紗雪の教室 休み時間

大地「紗雪ちゃん、今度の日曜に全国模試があるだろ?俺が受けた時の過去問、よかったらあげるよ」
紗雪「え、助かります!ありがとうございます!」
大地「これぐらい、どうってことないよ。」

蒼空「ふっ…浅はかだな、秋永大地。」
紗雪「また先輩に向かってそんな言い方…」
蒼空「紗雪の頭脳はすでに超優秀な領域だ。過去問なんぞ頼らなくても模試の結果は出せるさ。もっとも恐れるべきは当日の受験環境!現場における不測の事態だ!そういうわけで、コレを使え」

紗雪の机の上に丸くて白い機械(ハンドソープ程の大きさ)を置く。

紗雪「また変なのを…今度は何?」
蒼空「劣悪環境シミュレーターだ!最新の映像・音声技術を用いてリアルな現実を再現できる!」

スイッチを押すと、試験中のリアルな立体映像が映し出される

蒼空「隣の席の人が貧乏ゆすり激しいver、時計の音がやたら気になるverなど様々なトラブル環境を再現しながら勉強すれば、当日に何があっても慌てずにー」
紗雪「家でやる分にはただの勉強の妨げじゃん!大地先輩の過去問があれば十分だから!」
蒼空「だからこそのシミュレーターだろ!これはー」

長々と性能の説明をしている蒼空を無視し、大地に過去問のお礼を言う

◯ROUND3
全国模試試験の翌日 学校 昼休み

外のベンチで並んで座っている紗雪と美月。
紗雪はため息をつきながら自分の肩をもんでいる。

大地「お疲れ様、紗雪ちゃん。昨日の模試はどうだった?」
紗雪「大地先輩!頂いた過去問のおかげでかなり良い点とれたと思います!でも昨日の模試疲れが残ってて...」
大地「長時間集中して座ってるとしんどいよね。よかったらマッサージしてあげようか?」
紗雪「え…」恥ずかしさで顔が赤くなる

蒼空「どさくさに紛れて紗雪に触ろうとするな」
またもや不機嫌顔で大地と紗雪の間に割って入る

蒼空「素人のマッサージは逆に筋肉を痛めてしまう可能性もある。俺のこの一撃必殺ツボプレッサー(ハンディガン型のマッサージ機)なら、一瞬でコリも解消されるはずだ!」

紗雪の背後に回り込み、勝手にツボプレッサーを肩に置いてスイッチオン。ドッと強烈な打撃音がする。

紗雪「いったぁぁ!?」
蒼空「ああ!すまない、強過ぎた!?くそ、紗雪の細い肩の強度をまたしても見誤った…!」
肩を抑えて痛がる紗雪を見て、絶望する

その様子を冷静に見つめていた大地
大地「…蒼空君ってさあ、何がしたいの?」

蒼空「…は?」
大地「うーん、紗雪ちゃんを大切に思ってることも分かるけど、なんか役に立たなきゃって義務感みたいに感じるんだよね」

大地の言葉に蒼空の眉間にシワが寄り警戒心・嫌悪感をあらわにする

蒼空「悪いか?紗雪の夢と健康を守る。それが俺の最優先事項であり、使命だ。」

大地「俺が紗雪ちゃんを好きな気持ちとはまた違う異質さがあるよね。行動が意味不明すぎるってのもあるけど」
蒼空「何が言いたいんだよ」

大地「蒼空君はさ、紗雪ちゃんのこと1人の女の子として結局どう思ってるの?好きじゃないの?」

蒼空「ーーー大好きに決まってるだろ!!」

大地の挑発的な態度に思わずカッとなって言い返す

紗雪「…ええ!?そうなの!?」
紗雪の反応に、その場はシーンと静まり返る

美月「…紗雪、もしかして蒼空君の気持ちわかってなかったの?」
紗雪「だ、だってわたし蒼空に好きなんて言われたことなかったし…」
美月「えー!?好きじゃなかったらこんなに色々尽くそうとしないって」
紗雪「だって、身体の事で色んな人に過保護に接せられるのは今に始まったことじゃないし…蒼空も医者になる夢のためだってずっと…ねえ、蒼空!?」

蒼空は「しまった」という表情で固まっており、困惑している紗雪の問いかけに答えない。

大地「はははは!まさか紗雪ちゃんに何にも伝わってなかったなんて!蒼空君の一方通行な気持ちでしかなかったってことだね。これは…俺にもまだチャンスはあるってことかな?」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべる