紗雪モノローグ【中間テストも終わって、蒼空とも一応仲直り(?)して忙しない春が終わり...季節はいつのまにか夏の気配がし始めました。いよいよ明日は体育祭!...まあ、わたしは参加できませんが。】
グラウンドで他の生徒がテントや旗の準備をしている中、紗雪は救護テントの中で先生達と救急箱の準備などをしてる。
先生「増村さん。もうここの準備は終わったから、ゆっくり座っといていいわよ」
紗雪「はい、ありがとうございます」
テント内のパイプ椅子に座る
ガヤガヤと準備が忙しそうなクラスメイトたちをボンヤリと見つめる紗雪
紗雪(別に...小さい頃から体育もほとんど見学だったし、明日の本番は救護テントのお手伝いっていう仕事だってある。今さら参加できるとは思わないけどさ...)
蒼空「そんなに寂しそうな顔をするな、紗雪」
紗雪「蒼空」
蒼空「きみの考えてることは大体分かる。こういう大規模なイベントに関われる機会が少ないのを気負っているんだろう」
紗雪「...まあ、今に始まったことじゃないけど、ね」
図星ではあるので、強くは言い返せず苦笑いを浮かべる
蒼空「俺がこの前渡した【風圧カバー軽量軍手】や【転倒防止バランサーシューズ】を使えば競技参加も夢じゃなかっただろうに」
紗雪「軍手は気を抜いたら風圧でモノが吹っ飛んでいったし、靴もちょっと片足上げただけで地面にめり込むほど急に重くなるし、メチャクチャだったじゃない」
蒼空「いやいや!バランサーシューズは靴の中敷に改良したんだ!ぜひ上履きの中に仕込んでーーー」
谷尾くん「はいはい、蒼空は次こっちの準備な~」
蒼空は「さゆきいいいまたあとでええええええ」と言いながら谷尾君にひきずられていく
その様子を苦笑いで見ていた紗雪のすぐ後ろで、ボソボソと声が聞こえてくる
「ウチら汗だくなのに1日中テントいれるってさ...」
「蒼空くんの気も引けて、ラクも出来てさ。特別扱いすぎじゃね?」
「かよわ~いお姫様だもん、しかたないんじゃない?―――って、やべ」
紗雪が振り向くと、同じクラスの女子3人がクスクスと笑いながらそそくさと逃げていった
紗雪がその後ろ姿を無言のまま軽くにらみつける。
〇体育祭本番の様子 ダイジェストで
美月が玉入れしてたり、蒼空がリレーに出てたり、紗雪が救護テントでけが人の手当を頑張ってたり、男子生徒に手当する紗雪を蒼空がジャマしたりしている
〇体育祭終わり 救急箱を持って廊下を歩いている紗雪
紗雪(終わった終わった...大怪我も無くて何よりだわ)
1人で歩いていると、前日に陰口を叩いていた女子3人組が目の前に現れる。
女子1「増村さんさあ、ちょっと調子乗りすぎじゃない?」
紗雪「...何が?」眉をひそめて不快感を露わに
女子2「先生にも贔屓されて、蒼空くんといっつも一緒にいて。ずるくない?」
紗雪「え?蒼空といてズルイ?...え、なんで?」
目をぱちくりとさせる
女子3「はあ?知らないの?蒼空くんって実はめっちゃ女子から人気あるからね?イケメンだし、頭もいいし何かと多才だし...その気になれば、学校の王子様にだってなれるポテンシャルだから」
紗雪(え!?そうなの!?あんな、やること成すことただのキテレツ博士なのに...)
女子1「そんな蒼空くんをほとんど1人占めしてるんだもの。気分いいでしょ?」
女子2「増村さんも頭いいもんね、私たち普通の女子のこと、ぶっちゃけ見下してるよね?」
紗雪の脳裏に体育祭本番で競技に出て皆で笑い合い
"普通に"楽しむ女子たちの姿が思い浮かぶ。紗雪はそんな皆がむしろ羨ましいのに、と苛ついた気持ちがつい口をついて出てしまう。
紗雪「...何にも分かってないくせに...」
女子3「はあっ!?あんた、何様よ!?」
女子の1人に突き飛ばされて後ろにのけぞるが、瞬時に元の姿勢に戻る。
(蒼空がくれた転倒防止のバランサー中敷き機能が作動して紗雪のよろめきを検知し、猛スピードで姿勢を元に戻した)
その弾みで、突き飛ばした女子3が逆に転倒してしりもちをつく。
女子3「な...なに今の」
紗雪(ああ...そういえば蒼空が"転倒防止バランサーシューズ"を改良して中敷きを作ったって言ってたな...勝手に私の上履きにいれてたのね...)
女子1「あー!また蒼空くんに守られてんだ」
女子2「ホントずるいよね、お姫様じゃんか」
カチンときた紗雪は静かに言い返す。
紗雪「...私と蒼空の関係が面白くない事は分かった。確かに私は、この身体のせいで彼にいつも心配かけてしまっている。変な所もちょっと多...かなり多いけど、今みたいに助けてもらってることも多いと思う。」
キッと3人を強く見据えて言葉を続ける
紗雪「でも私は"蒼空がどうせ助けてくれるから"って甘えたことは1度もない。私と蒼空は同じ医者を目指す仲間として、今日まで関係を築いてきたの。だからこそ、彼なりの精一杯の応援や真心を私に与えてくれているだけ。これを他人にとやかく言われるつもりなんてない!!...お姫様だとか、バカにするな!」
女子1「...生意気な...!」
女子の1人が紗雪の胸元に掴みかかってきた
先生「おーい、お前ら!ホームルーム始まるから、早く教室戻れよ?」
女子1「...ちっ」
先生が通りかかり、女子1は紗雪から手を離し、足早にその場を去っていった。
紗雪(...こ、こわ~!危なかった〜!!早く救急箱置いて教室もどろ...。あ、今のは一応、蒼空のおかげで助かったからお礼言っとく...?でも言ったら調子乗りそうだなあ、でも、うーーん...)
中敷きのお礼を素直に言うかどうか、頭を悩ませながら
バタバタと足早にその場を去る
先生「おいおい、お前も早く戻れよ?」
蒼空「...はい」
先生が廊下を曲がったところで、蒼空が立っていた。
紗雪の中敷きバランサーがよろめきを検知したお知らせが蒼空の手元のスマホに通知されている。それを見て蒼空は駆けつけてさっきのやり取りを聞いていた。
蒼空の目は冷たく光っている。
〇ホームルーム終了後 下校前の人気のない廊下
先ほどの女子3人組
女子1「はあ、最悪なんだけどアイツ」
女子2「次こそ分からせてやらなきゃね」
蒼空「―――へえ、何を?」
女子達が振り返ると張り付いた笑みを浮かべている蒼空が立っている。
女子1「え!?蒼空くん?」
キャアっと色めきたつ女子達
女子3「ねえ聞いてよ!さっき私、増村さんに突き飛ばされてーー」
ガンっとものすごい勢いで女子3を壁ドンする蒼空。笑顔の仮面も剥がれ、今は真顔でメチャクチャ怖い。
蒼空「あのさあ...勘違いしてるようだけど俺、紗雪以外の人間は基本的にいらないんだよ?紗雪は俺と一緒に医者になる。その未来さえ手に入ればいい。この学校の...アンタらの王子様になるなんて死んでもごめんだから」
その迫力と怒気にガタガタと震えて青ざめる女たち。
蒼空「俺も紗雪も優しいからさ、同じ教室に存在することだけは許してやるよ。でもさっきみたいなことをしたら...そうだなあ、俺の実験、手伝ってもらおうかな?」
カバンからヘルメット型の何かを取り出す
蒼空「これ、失敗すると脳に負荷がかかりそうだから、紗雪にいきなり試すのは気が引けてたんだ。でも、君らがやってくれるなら、ちょうどいいなあ」
ヘルメットからバチバチッ!という放電音が響き、
女子達は悲鳴をあげる
蒼空「分かったら2度と俺と紗雪に関わるな。いいな?」
放電の光で蒼空の顔に影が落ちる
〇女子たちがいなくなった廊下でヘルメットを片手にたたずむ蒼空
蒼空(紗雪は...俺の手で立派な医者にしてみせる。その妨げになるものは全部全部...俺が排除してやるからな)
その表情は暗い決意に満ちていた。
