天才発明系男子の過保護な愛情〜病弱な私との歪んだ未来図


〇紗雪の三者面談
担任「紗雪さんは医学部志望ですね。しっかり対策を練れば十分合格圏内でしょう。」
紗雪母「この子は身体が弱いので心配ですが...」
紗雪「でも絶対行きたいの。お金が凄くかかるのは分かってるけど、奨学金も借りるし必ず返すから」
紗雪母「お金なんて私は別に...っ
(一度固く目を閉じ、覚悟を決めたように真っ直ぐ先生を見つめる)
...先生、どうか力になってやってください。よろしくお願いします。」

紗雪「お母さん...!ありがとう...!」
母と一緒に担任へ頭を下げる。

紗雪モノローグ【いよいよ本格的な進路相談が始まった。改めて医者になる決意を固めて、まずは医学部合格へ向けて受験シーズンに入っていく。】

紗雪モノローグ【そして蒼空の誕生日以降、今までよりも私たちは穏やかな関係性になってきたように思う。全部が良い方向に向かっている気がするーー】

モノローグと合わせて紗雪と蒼空のメッセージやりとりの画面↓
紗雪「渋々だったけど、医学部認めてもらえた!蒼空の三者面談の時、蒼空のお母さんに挨拶したいな」
蒼空「紗雪の頑張りを考えたら当然の結果だ。それはダメだ。」
紗雪「思春期?(笑)」

〇後日 蒼空の三者面談日

紗雪(今日は蒼空が面談の日だったな...蒼空はめちゃくちゃ嫌がってたけど親御さんに挨拶もしたいし...見にいっちゃおっと♪)

教室へ向かう途中の廊下で、蒼空と蒼空母をみつける。

紗雪(いた!うわあ、お母様もめちゃくちゃ美人...ってあれ?あの人どこかで見たことある気が...)

蒼空の母と憧れた女性医師の面影が重なる。

紗雪「え!?もしかして!?」

紗雪の驚いた声に蒼空親子が振り返る
蒼空母は目を細めて不思議そうに紗雪を見る

蒼空母「どなた?」
蒼空「紗雪...」瞳孔を開いたままみるみる顔が引きつり青ざめていく

紗雪「あの、10年ほど前に〇〇市で勤務してた内科医の先生ですよね?私、増村紗雪と言います。5歳の頃に入院した病院でたぶん診てもらったことあって...雪の日に外で倒れて救急で運ばれたんですけど」
蒼空母「え、紗雪ちゃんって...この学校だったの!?」

紗雪「はい!会えてうれしいです!まさか蒼空のお母さんだったなんて!あの、わたし先生に憧れて今医者を目指してるんです!」
興奮を隠せず目をキラキラと輝かせる

蒼空母「...そうなんだ。大きくなったね。」
紗雪に笑いかけながらも、一瞬鋭い目つきで蒼空を見やる母。蒼空は変わらず青い顔をしたまま俯いている。

蒼空母「うちの息子と仲良くしてくれてありがとう。よかったら今度家に遊びにおいで?」
紗雪「はい、ぜひ!...蒼空?」顔を覗き込む
蒼空「あ、ああ...俺はこのまま帰るから。また明日な、紗雪」顔をひきつらせながらも何とか笑顔を作る

帰っていく蒼空親子の背中を見守りながら
紗雪(まさかあの時の先生が蒼空のお母さんだったなんて...蒼空、様子が変だったけどそんなにお母さん見られるの嫌だったのかな?明日いろいろ聞いてみよっと)

〇翌日 朝 教室
紗雪「蒼空、おはよう」
蒼空「...ああ」無表情で目も合わせずにそっけない返事をしてスッと離れていってしまう
紗雪「...え」

そのあとも紗雪から何度か話しかけたが、返事はそっけなく、すぐに背を向けられたり突き放されてしまう。

◯授業中 自席で考え込む紗雪

紗雪(蒼空に避けられてる...どうして?わたし何かしたっけ?)

蒼空からスマホにメッセージが届く
蒼空文面「心拍に激しい乱れが確認できる。これくらいのことで動揺するな。こんなことで取り乱していたら医者になんてなれないぞ。心を強く持て。」
紗雪文面「勝手にバイタルチェックしないで。そもそも誰のせいよ。どうして私のこと避けるの?」
蒼空文面「俺は紗雪を医者にする。それだけが俺の使命だ。俺はそれを実行しているだけだ。」

蒼空からの返事を見て紗雪は眉を顰める
紗雪(こんな急にどうしたのよ...)

紗雪モノローグ【それからというもの、理由も分からないまま蒼空は私を避け続けた。そのくせ今まで以上に私の体調管理や成績向上に対する干渉が激しくなっていった。そんな日々が続きーーー】

〇数日後 お昼休み
お弁当を出す紗雪の机の上に分厚い参考書を何冊もドサドサと無造作に置く蒼空

紗雪「なに?」

紗雪は顔をしかめるが、蒼空は一切表情を変えずに答える。

蒼空「俺が厳選した海外の医学者だ。これを読んで3日後までにレポートを書け。もちろん英語でな。そうすれば医者になるのに必ず役立つ」

紗雪「なっ...!?いくら何でもこんな量できるわけないでしょ!?」
蒼空「そんな泣き言は許さない。君は医者になるんだ。それが君と俺が目指す共通の夢だ。なあそうだろう?」

蒼空から放たれる無機質な言葉と凄みに気圧される紗雪と美月

蒼空「それと君のその弁当。栄養バランスは悪くないが、もっと体力がついて脳の回復力に焦点をあてたものにしないとダメだ。俺が用意してきたからこれと交換させてもらおう。」
紗雪「...は?何言ってんの?やめて」

勝手に交換させられかけた自分のお弁当を掴んで制止する。

蒼空「手を離しくれ。俺が用意したものの方が理に適った食事だ。」
紗雪「余計なお世話!お母さんが私のために作ってくれてるんだから返して!」
蒼空「...何で分かってくれないんだよ...!!」

眉間にシワを寄せて苛立ちながら蒼空が強く紗雪のお弁当を引っ張ってしまう。その拍子にお弁当が床に落ち、中身が出てグチャグチャになってしまう。

そこでようやく蒼空がハッと我に返り「やってしまった」という顔をする一方、紗雪は落ちたお弁当を見つめ、怒りで手を震わしている。

紗雪「...最低っ!なんでこんな酷いことするのよ...大嫌い!!」

怒りのまま紗雪は教室を飛び出してしまう。
美月は蒼空を気にしつつも紗雪を追いかけていく。


蒼空(思い出せ。俺の成すことは紗雪に好かれる事じゃない。あの病弱な身体を管理し、夢を叶えさせてやるんだ。2人の気持ちなんて関係ない。たとえ、紗雪に嫌われても。そうでなければ俺は...許されない)
10話での幸せなやりとりを思い出して苦しげに胸を押さえて立ち尽くす。


◯中庭のベンチに座る紗雪と美月

美月「もぉ〜!最近までめっちゃいい感じっぽかったのに、また何があったのよ?」呆れ顔でため息をつく

紗雪「ごめんね、みっちゃん。でも今回は本当に訳が分からなくて...」

美月「確かに最近の蒼空くんはちょっと異常だったよね。うーん、何か嫌な事でもあったのかな?」

紗雪「イヤなこと...」
(そう言えば蒼空、お母さんと私を会わせるのめちゃくちゃ嫌がってたなあ。高校生男子ってそういうものかと思ってたけど、もしかして何か理由が?そうだ、蒼空に避けられ始めたのも三者面談終わり頃からだ...)

お昼休みが終わって中庭から教室に戻ると、キレイに洗われた紗雪のお弁当箱が机に置かれ、付箋で「ごめん」と書かれたメモが添えられている

紗雪(蒼空が会わせたくなかったお母さんと私の接点...それはただ1つ。5歳の時に入院した病院だわ。もしかして蒼空はその事を知ってる...?)

授業中も前方にいる蒼空の様子をチラリと見やるが、
背中しか見えずに表情は分からない。

(私が知らない何かが蒼空を苦しめてるんだとしたら、私はそれを知らなくちゃいけない。今の蒼空に聞いても何も答えてくれないだろうから、誰か、他に当時を知っている人...)

〜場面転換〜

〇紗雪の自宅ダイニング 母と2人きり

紗雪「ねえ、お母さん。私が5歳で入院した時の女性のお医者さんって覚えてる?」
紗雪母「え?ええ、なんとなく...」
言い淀んで目が泳ぎ出す

紗雪「実はクラスメイトの蒼空...って話したことあったかな?その子のお母さんがあの時のお医者さんだったの!」

紗雪母「...え...」
思いもよらない話に目を見開いたまま固まる

紗雪「三者面談の時に偶然会ったんだ。私、入院のときのことあんまり覚えてないけど、すごく良い先生だったのだけは憶えてて...お母さん?」

母の異様な様子に気付くが、母は複雑そうに目を伏せてくちびるを噛む。

紗雪母「...これ以上隠すのも不自然よね」
母は何かを覚悟したように1度強く目を閉じ、顔を上げて紗雪に真っ直ぐと向き直る

紗雪母「紗雪。あの時、あなたは勝手に1人で公園に行ったんじゃないの。あなたは同じ年の男の子に手を引かれて雪の中を走って公園に向かった...そして発熱と呼吸困難が起きて倒れた。...その手を引いていた男の子が、そのあと入院した病院の主治医・高瀬先生の息子さんよ。」

紗雪(...!!)
衝撃の事実に大きく目を見張る。