一週間後。二人は教会にいた。美華子の結婚式に出席するためだ。
 二人でドレスコードに着替え、落ち合う。朝陽はネイビー色のAラインワンピース、月はスーツだった。メイクをしてもらっているので、いつも以上に華やかだ。

「似合うね」

 月が朝陽に話しかける。

「……そっちも」

 月と目線を合わせることなく、朝陽が言う。月は嬉しそうに手を差し出した。朝陽はその手を取る。二人仲良く、教会の中へ向かった。
 だいぶ人が集まっていて、二人が座ったのは少し後ろの席だった。十数分待っていると牧師さんが現れ、結婚式が始まる。先に新郎が入って来た。次いで、新婦である美華子が父親と一緒に扉から入って来る。思ったよりもシンプルなドレスだった。美華子のことだからもっと派手なドレスを選ぶと予想していたのに思いっきり外れた。新郎の好みなのか、元々の美華子の好みなのか――朝陽には分からなかったが、それでもバージンロードを歩く美華子は輝いて見えた。

 ――結婚式はこういうものなのかと、目に焼きつける。

 美華子が新郎の元へ辿り着くと、父親は着席。元から席は決まっていたのだろう。迷いなく最前列に座った。
 牧師さんに従い、誓いの言葉が述べられた後指輪の交換がなされ、一通り結婚式は終わった。
 幸せそうな美華子と旦那さんの笑顔が印象的だった。
 最後に外へ出て、ブーケトスが行われることになった。
 二人並んで前の方に立っていたのだが、ブーケを取ろうと他の女性陣がそしらぬ顔をしながら前に出てくる。朝陽も月もいつの間にか三列目まで下がっていた。二人で顔を見合わせ、笑った。ブーケなんてなくたって――。
 そう思っていると、女性陣から声が上がる。いつの間にかブーケが宙を舞っていた。それは、女性陣の手をすり抜け、朝陽の胸元に落ちてきた。

「――え」

 キャッチしたのは朝陽だった。
 思わず月を見る。「よかったね」と微笑んでくれる。

「朝陽ちゃーん!!」

 美華子の声が聞こえて、そっちを見ると、手を大きく振りながら「おめでとう!!」と大声で言ってくれた。周りから拍手が起こる。朝陽はぎこちなく会釈をしながら、ブーケを握りしめていた。胸元を見て、徐々に実感が沸いてくる。月との結婚を夢見て、微笑んだ。