昔々、あるところに——
両親を亡くした一人の令嬢がいました。
彼女には継母と二人の継姉があり、
継母と長姉は令嬢を日々虐げました。
けれど次姉だけは、必死になって令嬢を守り、
二人は貴族として恥じぬように懸命に努めました。
やがて令嬢は王子に見初められ、王妃となりました。
継母と長姉はその悪事が暴かれ、罰を受けました。
そして令嬢を守り抜いた次姉は、良縁に恵まれ、公爵夫人となりました。
良きことには、良きことが。
悪しきことには、悪しきことが。
人のなすことは、やがて必ず己に返ってくるのです。
だから——良きことをしましょう。
この童話は、オーウェン王国でもっとも有名なお話である。
そして多くの者が知っている。これは作り話ではなく、実話である、と。
現在の王妃こそ、この「令嬢」の本人。
そしてその姉であるオクレール公爵夫人こそ、「次姉」のモデルであった。
王妃も、公爵夫人も、多くの子宝に恵まれ、幸せな家庭を築いた。
その姿を目にするたび、人々は改めて思うのである。
——良きことをすれば、良きことが返ってくるのだ、と。

