ボン・カリーには三人の兄が居る。

しかし、兄たちの婚約者と元婚約者候補たちもまた、何というか、美味しいのである。

ではまず、一番上の兄から行きましょうか。

ゴールデン・カリー。26歳。
ふわふわの金髪に、ニンジン色の瞳。色合いと髪質は私とよく似ていますが、ゴールデンお兄様はキリっとした表情で、長男らしい貫禄もあります。王都の人間としては体格のよいゴールデンお兄様は柔らかい笑顔が特徴の男性ですね。

ちょっと、天然ですけど。

ゴールデンお兄様は新婚……は過ぎた気がするけれどもラブラブ生活中で、お相手は2歳年下の24歳のお義姉さまです。

その兄の婚約者候補たちはこれまた凄かった。

まず一人目。

ナン・タンドール伯爵令嬢。こちらはエキゾチックな美人さんでありまして、半分は異国のババガヌーシュ王国の血が流れるという伯爵令嬢でした。

ええ、ほんと、ボンキュッボンのメリハリボディのエキゾチック美人さん。サラスト黒髪と褐色の肌、そして青い瞳が魅力的なお姉さまでした。少々そのエキゾチックさが、我が国のドレスとは合わないというお悩みもあるそうですが、おしゃれ好きのお姉さまです。

ただ、タンドールで焼いたナンとゴールデンカレーとはどうなのか悩ましいかったけれども……。

続きまして二人目。
チャパティ・フライパーン伯爵令嬢。チャパティって?と思ったあなた!ナンとは似て非なるカレーのオトモよ!確かにチャパティってフライパンで焼くけれどもさ、それでいいのかフライパーン伯爵家。余談だけれども、フライパンを発明したお家らしい。そのまんまですわね。
こちらは素朴ながらも手入れされてサラサラな茶髪と深い緑色の髪が魅力的なお姉さま。穏やかな方で、私の拙い話も聞いてくれるし、何よりも本が大好きなご令嬢!お勉強も得意な方らしく、分からないことが合ったら彼女に聞けばだいたい応えてくれる。分からないことがあれば、逆に調べてきて、次に教えてくれる才女。
特技は刺繍でして見せていただいた刺繡はきれいすぎて言葉になりませんでした。

ただ、チャパティって豆のカレーと合う感じですよね……。


三人目。
サフラン・ライス子爵令嬢。金髪に、アーモンド色の瞳。いつもニコニコ笑う彼女の目は、本気でタイ米に見えてくる。この方の魅力は誰が何と言おうとスレンダーボディ。何あのメリハリある身体、羨ましい!こちらは本当に才女。何といっても学園の首席をある方と競い合われた方でして、文官になるおつもりだと、言っておられました。しかも頭の回転も速いかたでチェスがお得意だそうです。私が勝てないのは仕方ないですが、ゴールデンお兄様も勝てないので、その腕は確かだと思います。

サフランライスはそのままがいいのよ……パエリアとかの方が好きなんだよね……。

最後の四人目。
コシ・ヒカリ侯爵令嬢。
白銀の髪に黄金色の瞳。ツヤツヤ炊き立て白米と、穂を付けて実りの秋を迎えた稲を思い浮かべてしまったのは仕方のないことでしょう。他のお姉さまたちと比べると、幼く見えてしまいますが、私は知っておりますわ。そのふくよかで、柔らかいふわふわのおっぱ……はい。

本命これですわね……。
ゴールデンカレーには白米。うん、絶対。

まあ、お察しの通り、コシ・ヒカリ侯爵令嬢がゴールデン・カリーお兄様の奥様となりました。

こちらのお姉さまは意外にもご苦労された方です。
御父上のヒカリ侯爵が愛人沢山、子沢山で、異母兄弟が多く、ただ、彼女は唯一の正妻のお子様でしていろいろと大変らしいのです。

ゴールデンお兄様の婚約者候補に選ばれたあたりで、お母様が亡くなられました。また御父上がクズ野郎でして、喪が明ける前に継母を屋敷に入れ込み、喪が明けた翌日に再婚。異母姉妹を可愛がり、他にも庶子も多く、元正妻のコシさまに全くと言っていいほど関心を向けていなかったそうです。

そうなればどうなるか、想像がつくでしょう。屋敷ではほとんど世話されなくなり、彼女の艶とコシのあった髪はどんどんとくすんでしまわれました。

ゴールデンのお兄様は流石に気づきました。それでもコシさまはゴールデンお兄様に何も言ってくれなかったそうです。

途中、婚約者を入れ替えようと画策した異母姉妹のキヌ・ヒカリ侯爵令嬢や、アキタ・コマチというヒカリ侯爵の庶子など数々の難敵をお兄様は完全スルーなさりました。ええ、同じ令嬢として恥ずかしくなるほどのアプローチでしたよ。コシさまの柔らかいのを見慣れておられたゴールデンお兄様の眼中にはありませんでしたが……。

しかしゴールデンお兄様はとうとう痺れを切らして、コシ・ヒカリ侯爵令嬢を我が家に連れ帰ってこられました。あまりに酷い扱いに、どうせ嫁になるんだから婚前でも連れてきてしまえばよい!と判断したそうです。

ただ、一つ文句を言うけど、そこはお姫様抱っこでしょ、お兄様!
コシヒカリだからって肩に背負ってお米様抱っこはないでしょ!!

そこから婚礼を上げるまでコシさまは我が家でお過ごしになられて、婚姻後は近くのタウンハウスで仲睦まじく暮らしております。

ゴールデンお兄様は婚姻が終わるまで、鋼のメンタルでコシさまに触れなかったそうです。味見程度があったかは知りませんが。


やっぱりゴールデンカレーは白米ですわね!
……二人の子供に会えるのが楽しみです。




とても不思議な話ですが、義姉上となられるコシ・ヒカリ侯爵令嬢と他の婚約者候補だったお姉さま方は学園時代にご友人となっております。皆さまとても仲良しさんです!

ちなみに私は、そのお姉さま方に可愛がっていただいております。

ついでなので、ご紹介いたしましょう。

ナン・タンドール伯爵令嬢です。
彼女のお母さまはエキゾチックな異国ババガヌーシュ王国の大貴族の娘でございまして、我が国とかの国の国交の始まりがタンドール伯爵と、ご婦人の結婚でありました。

そしてババガヌーシュ王国の使節団が王宮へ参ることになりまして、接待役の一人として選ばれましたのが、ナンさまです。ナンさまはババガヌーシュ語にも精通成されていたので、使節団の代表の第二王子の案内役に任命されました。

この時、ナン様18歳、出迎えられる王子様は22歳とのことでした。

その王子様がミート()()ババガヌーシュ(焼きナスペースト)第二王子。

エキゾチックな異国の王子様。黒というよりは藍色の髪に、琥珀色の瞳、褐色の肌。何よりも、鍛え上げられた腹筋が惜しげもなくさらされるババガヌーシュの衣装に、王宮の淑女の皆さまは目が釘付けに……。私も見たかったですわ。

ミート第二王子は見分を広げるための使節団としての来訪で、ただ、そのタイミングでナンさまが、言い寄られているのを見てしまわれました。悲しいことに、ナンさまの容貌はわが国では珍しく、好い意味でも悪い意味でも惹かれてしまわれるのです。

無理矢理手籠めにされそうになったところをミート王子がお助けになられたのですが、それがきっかけで今度は『ミート王子に粉をかけている』とあらぬ噂が……。

まあ、周りから色々と叩かれて大変だったナンさまですが、ミート王子が【メンタル的に】ボコボコに打ちのめしたらしいです。というよりも、容貌がババガヌーシュのものでありながら、我が国を愛して、良き所を必死で伝えようとするナンさまを見初めていたそうです。

もう、ミート王子は自分の伴侶とするなら彼女がいいと思っていたそうです。

ここから肉食系男子のミート王子の猛攻が始まります。

それを見た側近は急いで本国に確認、我が国にも確認。大慌てで外堀埋め込んでしまおうとしておられました。それもそうです。見合いを断り続けたミート王子が婚姻を結びたい令嬢を見つけたのです!側近の方々は必死です!

交流に交流を重ねたところでナンさまにプロポーズを申し込んだミート王子。ナンさまは悩んだそうですが、ババガヌーシュの出身であられるお母さまより、

『ババガヌーシュの王族はこの人と決めた人以外とは婚姻を結ばない。血を繋がなければならない場合でも、子は作るが結ばれない。ナンが断れば、第二王子殿下は一生誰とも結ばれないでしょう。ナンが本気で嫌ならそれでもいいわ。でも違うのでしょう?』

と、優しく諭されたそうです。

ナン・タンドール伯爵令嬢は覚悟を決めて、ミート王子の妻、つまり王子妃になられる決意をしました。返事をした時には、ミート王子が喜ばれ過ぎて、ナンさまを軽々抱き上げて喜んだそうです。

ナンさまはそこから1年、王子妃となられる勉強をなされて、合格点を頂いてからババガヌーシュ王国へと嫁がれることになりました。

我が国とかの国の友好の証としミート王子に嫁がれる際には、国王陛下がナンさまに多くの我が国の特産品を持たせ、ナンさまが我が国の大事な国民であるともアピールされました。

ご結婚の後、お二人は忙しそうでもありますが、とても幸せそうです。



うん、美味しい。エスニックな雰囲気的にも美味しい。




続きましてチャパティ・フライパーン伯爵令嬢です。
チャパティさまはゴールデンお兄様の婚約者候補からいち早く辞退された方で、お家の為にフムス(ひよこ豆)()ビターブラック(苦い消し炭)侯爵令息と婚約成されました。

ところがこのフムス・ビターブラックはなかなかのクズ野郎でして、平民の幼馴染を愛しているだ、お前とは白い結婚だ、まあ最低の万国博覧会の言葉が並ぶ男でした。

お家の為にその全てを飲み込んで我慢されたチャパティさまは心を穏やかにされるのは刺繡しかございませんでした。聞いているだけで私は泣きそうでした。

フムス・ビターブラックは婚約者であるチャパティさまよりも、その平民の幼馴染を大切にし、あろうことがプレゼントも手紙も一切送らないクズ野郎でした。

ですが、フムス・ビターブラックは生粋の馬鹿で、やらかしてくださいました!

何と国王陛下主催の舞踏会で、フムス・ビターブラックはチャパティさまに婚約破棄を突き付けたのです!

え?何がやらかしでしたかって?

まず、招待もされていない平民を婚約者として連れて来たのです!
……ちなみに本来は入口でお連れの方の身分も確認するのですが、フムス・ビターブラックの釣れということで、勝手にチャパティさまだと思っていたそうです。自業自得ですが、その確認のお仕事をされていたお方は二月減給です。

続いてビターブラック侯爵夫妻に無断で婚約破棄を言い渡しました。しかも王家主催の舞踏会ですよ?
ビターブラック侯爵夫妻は息子の愚行など知る由もなく、夫人は気絶されました。
むしろ、チャパティさまの方が気絶されたかったと思いますよ?

そこで泣き叫ぶわけでもなく、いつものような柔らかな笑顔を浮かべたチャパティさま。

『ありがとうございます。それは初めていただく最高の誕生日プレゼントですわ』

凛とした声で淡々と語ったチャパティさまはその場でとてもきれいなカーテシー。奇しくもその日はチャパティさまのお誕生日でした。

『手紙を送りましても返事はない。誕生日に物を送ってもお礼もない。挙句に、プレゼントなど一度も貰ったことない相手と婚約破棄……嬉しすぎて泣きそうですわ』

音楽も一切消え去ったそのダンスホールで淡々と申し上げるチャパティさまがカッコよすぎて思わず応援しておりました。ただ、その事実を聞いたチャパティさまのお父様であるフライパーン伯爵は怒り心頭の顔で今にもフムス・ビターブラックに殴りかかりそうでした。騎士様が抑え込んでおられましたが……。

凛とした姿で笑ったチャパティさまは国王陛下に向かってカーテシーを披露なさりました。

『国王陛下、このような素晴らしい場所で場を汚すような真似をしてまことに申し訳ございません。本日は少々早いですがお暇いさせてただきます』

そう言って帰ろうとしたところで、チャパティさまにエスコートの手を差し出されたのは若き公爵様でした。

タンドリー・チキン公爵。

赤みかかった金のきめ細やかな髪と、真っ赤な目を持たれた若き公爵。誰が彼を射止めるのかと思っていました、ここ最近で一番の最優良物件!

エスコートを受けようとチャパティさまがその差し出された手に手を重ねたのです。
そこでタンドリーさまはチャパティさまの手を取られて、手の甲に唇を落とされました。

ええ、上がりましたよ。盛大な黄色い悲鳴が!

『チャパティ・フライパーン伯爵令嬢。あなたのこの手から生み出される刺繍の数々にずっと心を惹かれておりました。チャリティーの刺繍作品を紹介する場でお会いしたのを覚えておりますでしょうか?あの時から私の心はあなたさまに向いております』

もう、アツアツな熱烈視線をチャパティさまに送るタンドリーさま。

『あなたを誰よりも愛し、大切にすると誓います。私と婚約、そして婚姻を結んでください。』

2度目の黄色い悲鳴が響きました。ええ、もう、皆さま、とくに私と同世代の恋する乙女世代は若き公爵の一世一代の大告白に固唾を飲んで見守ります。私もケーキ片手に見守りました。

ただ、チャパティさまはどうしていいか分からずに、騎士に取り押さえられていたお父上のフライパーン伯爵を見ました。冷静さを取り戻したフライパーン伯爵は騎士たちに礼を言ってから意気揚々としてグッドサイン。

『わ、わたしで、よろしければ』

恥ずかしそうに、でも嬉しそうにお答えになられたチャパティさま。

そこからは早かった!その成り行きを見ていた国王陛下がその場でフムス・ビターブラックとチャパティさまの婚約破棄の手続きを行い、なおかつその場でタンドリーさまとチャパティさまの婚約の手続きを行いました。



ええ、早すぎて用意されていたのではないかというスピードです。



現在、チャパティさまは公爵夫人として、多くのチャリティー活動を行っております。
忙しそうでありますが、刺繍の腕は今でも健在でしてタンドリーさまのタイとハンカチには必ずチャパティさまの刺繍が入っております。ラブラブですね~。


タンドリーチキンをチャパティとっても美味しいですよね。




最後はサフラン・ライス子爵令嬢。
サフランさまは子爵令嬢ですが、お父上とお母上が文官でして、お二人の功績により子爵位を与えられた、いわば実力でのし上がった子爵家の令嬢です。と、言われましてもご両親とも公爵家の出ですので、生粋の貴族のお家ですが。

そんなライス子爵家は言うなれば質素倹約。誠実のお家でございました。サフランさまはそんなご両親の元で育ったために、質素倹約、尚且つ実務処理に優れた才女でございました。学園時代には王太子殿下の側近であられる侯爵令息と首席争いをされるほどの才女。

まあ、その侯爵令息……ことシーフド・パエリア侯爵令息とよく喧嘩をされていたそうです。喧嘩と言ってもお二方の言い合いはどちらかというと討論会でして、大人顔負けの意見が出て、最終的にはブラッシュアップされた最適案が出てくるという討論会だそうです。

この討論会を見ていたパエリア侯爵は秘かにサフランさまに目を付けていたとか?

そんなお二人の仲がぐっと近づかれたのは悲しいことにパエリア領を襲った大津波でありました。地震の後にパエリアの港を壊滅させた大津波。

パエリア領の主要産業である水産業が大壊滅となりました。

シーフドさまは、王太子殿下の側近を辞退して、パエリア領の復興に力を注ごうとしたところ、王太子殿下は『何年かかっても待っているから戻ってくるように』とのお言葉を掛けられたそうです。

その地に行く馬車に一緒に乗り込んだ才女。シーフドさまは驚かれたようですが、サフランさまは『私の頭脳も必要でございましょう?』とにこやかに笑われたとか。

お二人が見たのは水の都と呼ばれたパエリア領の更地となった姿。絶望するシーフドさまを叱咤したのはサフランさまでした。

『絶望している間があるならこの地をもっと素晴らしい地にする案を考えろ!一分一秒でも早く、この港が元通り、いやそれ以上になる案を考えて、動くんだ!自分たちで作り上げた町は、また希望になる!』

サフランさまの声がその更地に響き渡りました。絶望していた領民たちは生きる希望を見出したと言います。

シーフドさまとサフランさまはその日から新しい都市計画を書き出しました。また再び津波が来ても破壊されない港づくり。2人が喧嘩のような言い合いの末に作り上げられた都市計画はパエリア侯爵さまも驚くほど素晴らしいものでした。

パエリア侯爵は2人の都市計画を領民に提示。領民たちはその都市計画を読み、そして不明な点を2人に尋ね、疑問を解き、足りない部分を補強して都市の再建に着手しました。

学生であるお二人の都市計画案は現役の文官からみても、宰相閣下からみても、学生レベルではないと、国王陛下へ伝えられました。

都市計画が軌道に乗ったところで、お二人は学園に戻られました。あれだけの苦労を共にしたのです。お二人の距離はグッと縮まりました。

しかし、サフランさまは学園卒業後に、宰相室付きの文官になられるおつもりでした。
あの都市計画案が認められて、サフランさまは宰相閣下より、宰相室付きの文官への推薦を頂きました。

そのタイミングでシーフドさまがサフランさまに求婚をなさいました。

この頃にはお二人とも同じ想いであったでしょう。しかし、サフランさまの夢は文官になること。次期侯爵夫人が文官室に勤務など体面的に悪すぎるのは分かっておりました。

サフランさまは身分差を理由に、求婚をお断りになられました。

ですが、シーフドさまは転んでもただは起きぬ男でありました。

卒業前に学園の一大行事がございます。それで優勝したものは国王陛下から褒賞を与えられるのです。

そう、学生のチェス大会。学園の中で優れたチェスプレイヤー8名のトーナメント戦です。

国王陛下と王妃殿下の見守る中で行われるチェス大会。
シーフドさまはチェス大会に出ることにしました。普段はあまりチェスを指すことはありませんが、この日の為に、かなりの特訓を重ねました。

下馬評で言えばサフランさまが優勝し、女性初の学生チャンピオンになるのでは?と言われておりました。

そして決勝戦。優勝候補のサフランさまとダークホースのシーフドさまの対決となりました。誰もが息を呑むほどの激選。接戦。指し手を見られたプロのチェスプレイヤーですら、どちらが勝つか予測できないほど高度な盤上の決戦。

最後、まさかのシーフドさまの歩兵(ボーン)がサフランさまの(キング)を捕えました。

盤上を見たサフランさまが驚きの顔でシーフドさまを見つめておりました。

その瞬間、息を忘れていた観客の歓声が沸き上がり、溢れんばかりの拍手が降り注ぎました。

ダークホースのシーフドさまに国王陛下は褒賞を尋ねられました。

『私の妻は、私の愚行を止められる頭脳の持ち主が良と考えております。しかし、私が妻に望む人は、『侯爵夫人』が宰相室に勤務するのは体面的に良くないと私の求婚を断りました。』

学園の人間たちはソレが誰を指しているがすぐに分かったそうです。

『私の望みは、彼女の身分が変わっても、変わらず国の為に働ける機関に属せること。それを有無言わせない仕組みを、国王陛下にお願いいたします!』

隣で控えていたサフランさまは涙を浮かべていたそうです。

国王陛下は王太子殿下より仔細を聞いていた為、すぐにピンと来てサフランさまにお尋ねになりました。

『ライス子爵令嬢。パエリア侯爵令息はこのように申して居るが、貴殿の気持ちを問おう』

国王陛下のお言葉に、サフランさまも覚悟を決められたそうです。

『私は……私よりも頭の悪い人間とは結婚は無理だと思っております』

この言葉に学園の人間たちは思わず大きなため息を吐かれたそうです。何故なら、直前の試験ではサフランさまが首席を取られていたからです。

『このような大舞台で私の得意分野で、私を負かしたこの方と、添い遂げられれば幸せと、思います』

国王陛下は『高貴な身分だろが、国の為に働いてはいけないという法律はない。故に、褒賞にならん。代わりに2人の婚姻を認めるとしよう』と高らかに宣言されました。もう、その瞬間の黄色い悲鳴は凄かった。割れんばかりの祝福の言葉。


国王陛下直々にお二人の婚姻を認められ、サフランさまは驚きつつも嬉しそうでありました。現在は宰相室の補佐として旦那様と忙しく活躍されています。

ええ、美味しいです、シーフードパエリア美味すぎます、本当に。

こちらの四人のお姉さまがたは未だに友情をはぐくんでいる。
本日は使節団として久々に母国に戻られたチャパティさまを労って、仲良く四人でお茶会なのです。もちろん我がカリー邸が茶会会場です。

もうすぐ心の狭い四名の殿方がお迎えに参るとでしょう。
それは私の見慣れた光景です。

ただ、お姉さまの惚気は飛び級に美味しい。


【本日のお品書き】
1.甘さかおるコシヒカリとゴールデンカレー
2.香ばしナンとミートババガヌーシュ(肉と焼きナスペースト)
3.タンドリーチキンのチャパティ包み
4.スパイスかおるシーフードパエリア