「顔死んでるけど」
「…うるせぇな」
「ほら、柚子ちゃんなんかびびってんじゃん」

 なんとなくだが青ざめているようにも見える。実際、あの人―――柚子ちゃんと木戸君はほとんど絡んだことがないのだ。クラスも一緒になったことがないし、木戸君の一方通行なのだ。さっくり木戸君は傷ついた顔をしたが、自業自得である。

「鍋島はさ、髪伸ばさないの」
「何、急に」
「今みたいな男みたいな髪より似合うだろうなって」

 誰を思い浮かべて似合うと言ってるのか分かって、かっと身体が熱くなる。
 
「柚子に好かれたいならそのデリカシーのなさ直さないと視界にも入らないよ」

 捨て台詞を吐いて、その場を離れる。
 本当にこんな男のどこが好きなんだろう。

***