winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

帰りの身支度をしていると、多田さんに声をかけられる



「愛奈ちゃん。今日帰りご飯食べに行かない?」



「香織さん、いいですよ。私てっちゃん飲み屋の焼き豚がいいです」



私は弾んだ声で嬉しそうに答えた



私を誘ったのは、今日鬼役をやった多田香織さんだ



残念ながら女の人で、面白くて優しい私のお姉さん的存在だ



「愛奈ちゃんは焼き豚好きだねー。普通若い子って、素敵なイタリアンとか、フレンチとかを好むんじゃないの?」



何か親父みたーい



香織さんは着替えながら嫌味のように言ってくる



「親父で悪かったですね。何なら1000円ぽっきりで飲める立ち飲み屋だって1人で行けますよ」



私は事実をそのまま伝えてみた



事実私は立ち飲み屋だろうが、立ち食い蕎麦屋だろうが、余裕で1人で行ける



「愛奈ちゃんそれはまずいわ。まだ若いんだから1人で立ち飲み屋は止めた方がいいよ?」



香織さんは呆れるのを通り越して私を憐れんでいる



「別に立ち飲み屋に行ったって、親父達が酔っ払いながら飲んでるだけで、誰も私を気にしませんから。まあたまに一緒に飲もうやって声かけてくる親父もいますけどね」



それだけです



言っていて何とも寂しいなと思う



確かに、20代の若者が、イケメン彼氏とではなく、たった1人で立ち飲み屋で飲み、親父達に囲まれているのだ