winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

「愛奈元気だった?」



拓が昔と同じように話しかける



「うん。元気だよ。拓は…?」 



思ったよりも普通に話せている事が不思議だった



「まあ、元気」



そう言って屈託なく笑う拓は、やっぱり昔のままだと思った…



「そっか、良かった元気そうで…」



私も笑い返す



「拓は、偉くなったんだね」



お父さんの会社を継いだんだ



私は続けて言った



「まあ、そう…父親の会社を継いだんだ…」



拓はそう言うと言葉尻を濁している



「愛奈…ぼく…」



拓がそう言いかけた時、「専務…」と後ろから呼ぶ声がした



「はい。今行きます」



そう言って拓は戻ろうとする…



「愛奈…また会って話したい…」



そう一言言って、拓は去って行った…



私の心は心臓を射抜かれたみたいにざわついてドキドキしていた



5年前の激しくも悲しいどうしようもなく抑えられないドキドキした気持ちが蘇る



私は拓に対する気持ちがフラッシュバックしたように、激しい衝動が甦った



まさか貴方にまた会うなんて…



私のざわつくこの心はどうしたらいいのでしょう?



また貴方に会って、私はどうしたいのでしょう?



《またあれを繰り返すの?》



私の中のもう1人の自分が私に問い掛ける…



私はその問いかけに、直ぐには答えられなかった…