winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

クリスマス会の準備を始めていると、玄関が騒がしい



「今日誰か来るんですか?何か本部が騒がしくありません?」



いつも穏やかなうちの施設があんなにせわしないなんて珍しい



私は疑問に思って香織さんに訊ねた



「何か今日ここを新しく買い取った大元の会社のお偉いさんが視察に来るんだって。何か葉山なんとかって言う??」



葉山?



私は一瞬ドキンとした



その名前は私が聞きたくない名前だった



昔の辛い記憶が少し蘇ってしまう…



「そうなんですか…まあ私達一介の職員には関係ありませんけどね」



現実問題、対応するのは施設長とか事務長とか本部の人間だ



私達には関係ない



私はあまり気にしないで仕事をする事にした…



クリスマス会が始まり、外を見ると雪がハラハラと降り始める



スノークリスマスだ…



クリスマスに雪なんて珍しいな



私は少し5年前のクリスマスの雪の日を思い出していた



辛い記憶だったけど、最近では少し受け止められるようになったな



私は降り始めた雪を見て、少し感傷に浸るのだった…