winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

二人で映画館に行った帰り、突然の雨にみまわれて、私達は仕方なくそこから近かった浩大のアパートに寄っていく事になった…



雨は土砂降りで中々帰れそうにない…



とりあえず、服を脱いで乾かそう



私達は全身がびしょ濡れで、脱いで乾かさないと風邪を引いてしまう…



私は少し躊躇したけれど、脱いでシャワーを借りる事になった…



シャワーを浴びて服を借りた私は浩大と二人の空間になる…



何となく二人だけの気まずい雰囲気になった私は、何とかこの場を盛り上げようと苦し紛れに話し始めた



「昔はよく、二人で映画館でデートしたよね?」



言ってしまった内容が何とも触れては行けない部分を増長させる



「そうだな。愛奈、俺たちまた付き合わないか?あの頃みたいにやり直せないかな?」



今までここ数ヶ月間触れないようにしていた話題をふられてしまった私は戸惑った



「浩大…私…」




そう言った途端、ピカンゴロゴロという稲光と共に雷が鳴る…



きゃっ



私は浩大に抱き抱えられた



少しだけ時が止まる…



「愛奈…俺…」




浩大の顔がゆっくり近付いた…




その途端…



愛奈、好きだよ




愛奈、愛してるよ




行ってきますのチュー




拓との記憶が、フラッシュバックのように次から次へと蘇る…




気付くと私はポロポロと沢山の涙を流して泣いていた…




「浩大…ごめん…」



「愛奈…?」



涙を流す私に浩大は戸惑っている…



「ごめんなさい浩大…私…彼が、拓が忘れられないの…」



本当にごめんなさい



そう言うと私は浩大のアパートを飛び出していた…



愛奈…



そう後ろから叫ぶ浩大の声が聞こえたけど、私は振り返ることが出来なかった…