winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

「待って愛奈。折角僕達の赤ちゃんが出来たのに、堕ろすって何で?」



中絶って勝手に決めないで
     


拓は焦ったように言葉を口にした



拓らしいなと思った…



何となく、拓ならそう言うような気もしていた…



「現実問題、今赤ちゃんが出来ても、私が働かないと生活していけないじゃん」

 
  
赤ちゃん産むなんて無理だよ



私は押し殺していた物を吐き出すように言葉を口にしていた



「愛奈が働けないなら僕が働くし、何も堕ろすって決めなくてもいいでしょ?」      



その言葉も予想してた…



「働いたら拓の夢はどうするの?働くの増やしたら音楽活動できないじゃん…」
   


私は拓に夢を諦めてほしくないんだよ…



私は必死の思いで泣いて訴えた…



「赤ちゃんが出来ても、僕は夢を諦めたりしないよ。ごめんね愛奈。僕が頼りないから。愛奈にばっかり負担をかけて…」



愛奈を追い込んだのは僕だね



そう言って拓は私の手を握った…



「僕達の赤ちゃん一緒に育てよう」



私を抱きしめて拓は笑って言った…



1人で怖い思いさせてごめんね…



「ごめんね拓。私がもっとちゃんとしてれば、拓の夢の邪魔する事なかったのに…」
   


「謝るのは僕のほうだよ。愛奈のせいじゃないよ。愛奈は何も悪くないから謝らないで」



悪いのは僕だよ



ごめんね愛奈



泣いている私を宥めて、拓も泣いて言った…



「僕達ちゃんと結婚して籍入れよう」



私は涙が止まらなかった



赤ちゃんが出来たと分かってからずっと怖くて堪らなかった…



私は泣きながらコクっと頷いた



クリスマスを1週間後に控えた日…



私達は家族になってパパとママになる決意をした…