winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

堕ろす…



私の頭の中を中絶が過った



今この状況で産めるだろうか?



私は自分が妊娠を喜べないことが嫌になった…



結局、その晩拓が帰ってきても、私は拓に妊娠の事を打ち明けられなかった…



次の日…



休みだった私は拓に風邪を引いたから病院に行くと言って嘘をついて、産婦人科に行くことにした…
 

  
鈴野さん。と呼ばれて診察台に上ると、私はまた怖さが込み上げてくる…



「やっぱり妊娠してますね。今8週目に入っています」



やっぱり妊娠してるんだ



私は予想はしていたけど、妊娠が確信に変わり更に怖くなった…



「妊娠を継続する場合は、次回までに母子手帳を貰ってきてください。中絶する場合は、早い段階の方がいいと思います」



中絶⁈



赤ちゃんを殺すって事?



それは嫌だ…



でも、今の私に産めるの?


 
だめだ…産んであげられる状況じゃ無い



「中絶って、どうしたらいいんですか?」



私は気付くと赤ちゃんを中絶する事について訊ねていた



「人口中絶手術には、相手の方の同意とサインが必要です。用紙をお渡ししますので、相手の方とよく話し合ってください」



分かりました…



ポツリと言った言葉に私の頭は真っ白になった…



中絶にも拓の同意書が必要なんだ…



拓は…何て言うだろうか?



拓の事だ…2人で子供を育てようと言うに違いない



でも、拓の夢の邪魔になっちゃう…



あと1週間でクリスマスを迎えようと言う日…



私は人口中絶手術の同意書を片手にクリスマスムードで賑わう街並みを背にトボトボ歩いた…