winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

拓は公園でのストリートライブを続けながら、日中はカフェでバイトする事になった…



元々日雇いでバイトをしながら音楽活動を続けていた拓は、毎日違うバイト先を転々としていたという



バイト代を日払いで貰い、一年近くその日暮らしの気ままな生活を続けていたという事だ…



なぜ家を持たないのか?と言う質問に、「うーん、自分1人なら別に困らないから」

  

でも、半年くらいは友達の家に住まわせて貰ってて、共同生活をしてたよ



まあ、彼女と住むからって言われて僕は出て行ったけど…



そうなんだ…



ずっと1人じゃなかったんだね


 
私は少し安心した…



拓は多分、頭がいい 



一度拓の荷物の中から、経営学と書かれた分厚い本を何冊か見つけた事があった…



これは…きっと大学の参考書だよね?
   


拓は大学生だったのかな?



それもそこそこ頭が良さそう?



私は気になったけど、何となく怖くて聞けなかった



私は拓について多くを知らない



知ってしまったら、私達の今の生活が崩れてしまう気がして、怖くて聞けなかった…



拓はどこから来たの?



拓のご両親は?実家は?



詳しい素性については何も聞けない‥



拓について知っていることは、凄く綺麗好きで、家事が得意で、好きな物は甘い物で、特にチョコレートに目がなくて、いつも屈託なく良く笑って…



家の無い家出人と言うことだけだった…



後は性格が穏やかで、滅多に怒らなくて、凄く優しいという事実だけだ…



今があればいい…



この幸せがあればいい…



私は、1日でも多くこの幸せが続く事を願っていた…



そんな私達に変化が訪れる…



拓は言ったね…



愛奈に愛奈だけの歌を作ってあげるって…



私は今も忘れてないよ…



貴方の透き通る綺麗な歌声が、今も耳に残っています…



拓…愛してる…