winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

ごめん。愛奈を泣かせたのは僕だね…



愛奈泣かないで…



拓が私の涙を拭った



「愛奈…触ってもいい?」



私は少し躊躇した



心の奥でもう1人の自分が警告する…



‘今ならまだ引き返せる‘



でも…



もう私の心はもう決まってしまっていた…



「うん…」



静かにそう一言だけ言って私は頷いた…



私達は初めてキスをした…



もう引き返せない…



あなたは本当にそれでいいの?



心の奥にいるもう1人の自分が私に問いかける…



分かってる…



でももうだめなの…



拓なしじゃ生きられない…



その夜、私達は初めて結ばれた…



「愛奈…愛してる…」



拓が私の耳元で切なく囁く…



「私も愛してるよ…拓…」



そう言った私の目から一筋の涙が零れ落ちた…



もう桜も散った新緑の季節…



季節は少しずつ初夏に変わり、暑さを帯びてくる



体を重ねても切なくて、泣きたくなるような夜だった…



まるで、これから私達に起こる悲しい出来事を予兆しているように、新緑の葉っぱがハラハラ落ちて散っていく…



これから私達に切なくて悲しい物語が待っている事など、この時の私達には予想もしていなかった…



愛奈の為に僕が歌を作ってあげる…



満面の笑みで、貴方はそう言ったね…



貴方の言ってくれたあの言葉を、私は今も忘れてないよ…



貴方に出会えて、私は後悔なんてしてないよ…



拓、あなたに会えて良かった…



愛してるよ…拓…