winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

えっ⁈いいの⁈



拓はあからさまに驚いている



「誤解しないでね。男女の関係一切無し。只の同居人。何かしようとしたら即追い出す」



恋愛関係一切無しだから



そう威勢よく言っては見たものの、我ながらとんでもない事を言っているんじゃないかと思う



自分で自分の言っている言葉に驚いているくらいだ



「それは大丈夫。愛奈には指一本触れないと約束します」



本当にいいの?



僕、掃除でも洗濯でもご飯作りでも何でもするよ?



僕得意なんだ



拓の目は輝いている



まるで捨て犬が拾ってもらう為に尻尾を振っているような図だ



そんな目で私を見ないで



私は拓を見ていられなくなった…



「掃除と洗濯はいいよ…でもまあ、炊事はちょっとお願いしたいかも…?」



「分かった。じゃあ僕愛奈の為にご飯作るよ。ちゃんとご飯作って愛奈の帰りを待ってる」
       


拓の目はまた輝いている



すっかりその気なようだ



そんな目で見られたらなー



「そんな待っててくれなくていいよ。拓は拓の生活をちゃんと送って」



分かった。僕もちゃんと働く所探す



ちゃんと生活する



そう言って拓はまた八重歯を見せて笑った



じゃあ、交渉成立



それから私達の恋愛関係一切無しの同居生活が始まった…



自分がどれだけ突拍子もない言を言っているのか分かっているけど、目の前の捨て犬みたいな拓を、私は放っておけなかった…