winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

それからそのギター弾きの男の子は、時々私の帰り道の路上で歌うようになった…



変則勤務の私は、毎日同じ時間に勤務が終了するわけじゃない為、見掛けたり、見掛けなかったりだ



見掛ける率はどちらかと言うと低い…



でも、時々見掛けるそのギター弾きの男の子の歌を聴きにいくのが、私の唯一の楽しみで、癒しとなった…



そんな日々が2ヶ月くらい続いたある日…



いつものように最後まで歌を聴いていた私は、男の子に呼び止められた



「お姉さんの名前を教えて?」



「えっ!」



私は少し驚いた



まさか名前を聞かれるとは思わなかったから…



「私は…《あいな》愛奈…鈴野愛奈」



「愛奈って言うんだ。いい名前だね」



「僕は…《たく》拓。ローマ字読みでTAKUで活動してるんだ」



そう言えば聞きもしていなかった名前に私は新鮮さを覚えた



「拓か。私拓の歌声好きだよ。透き通ってて、綺麗で」



私、ここでの拓のファン1号だね



私は少し照れるけど素直な気持ちを言ってみた



拓は少し笑っている



「有難う。初めて会った時も、僕の声が綺麗って褒めてくれたね」