winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

5年前とは違い、ポツラポツラの数人のお客さんではなく、観衆の賑わう沢山のお客さんだ…



拓の歌声だ…



拓がまた歌っている…



私は涙が止まらなかった…



拓の歌はその後何十分も続いた…



歌が終わり、私は拓に近付く…



「綺麗な歌声だね」



私は千円札を一枚置いて行った



「待って…」 



拓が私を呼び止める…



「お姉さんの名前を教えて?」



拓が笑って私に話しかける



「愛奈《あいな》。鈴野愛奈」



「いい名前だね。僕は《たく》。ローマ字読みでTAKUで活動してるんだ」



拓ははにかんだ笑顔で八重歯を見せてそう言った



「愛奈はお1人様?」



拓が屈託のない顔で笑って訊ねる…



「うん…まあ…たった1人の、拓っていう愛する人を待ってるの」



私は泣きながら笑って応えた



拓が私を引き寄せる…



歩道橋の真ん中…



私達は抱き合った



「愛奈…愛してるよ…ずっと一緒にいよう」



拓ははっきりとした声で私にそう言った…



「うん…私も拓を愛してる」



私達はキスをした…



もう離れない



私達はお互いに愛を誓い合った…