winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

気付くと聞き入っていた私は、辺りを見回すと一人になっていた…



あっ、やばい 
     


私ずっと聞いちゃってた



「綺麗な歌声だね」



そう率直に感想を言うと、私はチャリンとお金を置いて去ろうとした…



「有難う。僕初めてここで歌うんだ。お姉さんが最後まで聞いてくれた第一号」



ギター弾きの男の子ははにかんだ笑顔で嬉しそうにそう言った



そして続けて言った…



「僕、またここで歌うから、見掛けたらまた聞きに来て」



そう言ってまた男の子は屈託のない顔で笑う



八重歯がキラリと光って、可愛いなと思った



「分かった。また必ず聞きにくるね」



私は必ずなんて約束できないのに、その男の子の屈託のない笑顔に負けて、気付くと約束していた…



「雪降ってるから、風邪ひかないでね」



ハラハラと降り続ける雪の中、もうそこに立っているのはその男の子と私だけだった



「大丈夫。滅多に降らないのに雪なんて幻想的じゃん」



男の子はまた屈託なく笑う



「確かに」



そう言って私も笑った



雪はその後もずっとハラハラと降り続ける…



私とそのギター弾きの男の子は、少しの間2人で降り続く雪を眺めた…



何分間一緒にいただろう?



寒いから帰ろう



そうだね。じゃあ、また…



そう言って私とそのギター弾きの男の子は簡単に挨拶を交わして別れた