winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

「分かった…会社はお前に任せるよ…」



俺は専務の座から降りる…



僕は力強く隆人に言った…



「本当に兄さんはムカつくね。そう簡単に俺に会社を譲って…昔からそうだった…俺が欲しいって言うと兄さんは何でも俺に譲ってくれた…俺はそんな兄さんが嫌いだったよ」



隆人らしい言葉だなと思った…



性格はまるで違っていたけれど、まだ一緒に遊んでいた幼少時代を思い出す…



昔、僕が持っていたラジコンの飛行機を、隆人が欲しがった時があった…



そのラジコン飛行機は僕の誕生日に父さんがくれた物で、僕の一番大切な宝物だった…



欲しい欲しいと泣いて欲しがる隆人に、母さんは隆人にはまた買ってあげると弟を宥めた…



でも僕のそのラジコン飛行機が欲しいと泣いて欲しがる隆人に、「いいよ。あげる」と僕はラジコン飛行機をあげた…



あげたら丸く収まる…



あげても別にいい…



昔から何でも一番最初に与えてもらっていたせいか、僕にはどうしても欲しい物なんてなかった…