「強くなって、権力を得る事だけが、人を守る事じゃないわ。優しさでだって人は守れる。優しい人が弱いとは限らない。拓人は拓人の人生を生きてね。やりたい事をやり、好きな事をして、好きな人と暮らして欲しい。まだ若くて自分には何一つ責任のある事が出来なかったけど、今ならできるでしょ?今なら守りたいものが守れる」



後悔をしない人生を生きてね



母はそう言うとただ眠るようにそっと目を閉じた…



「母さん…」



僕の呼びかけに母さんはもう応じなかった…



それから程なくして母さんは亡くなった…



母さんの葬儀は3日後に決まった…



告別式、お通夜がひっそりと行われ、沢山の人が参列した…



僕は大好きだった母さんが亡くなって悲しくて泣いた…



「拓人坊ちゃん」



家政婦の真奈美さんに呼び止められたのは、母さんが亡くなって1週間が経った頃だった…



「奥様から、もし私が亡くなったらこれを拓人坊ちゃんに渡して欲しいと生前預かっておりました…」



真奈美さんはそう言うと僕に一枚の便箋に入った手紙と封筒を差し出した



僕は何だろう?と少し不思議に思いになりながらもその手紙と封筒を受け取る…



僕は静かに手紙を開いた…