winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

降りて。と促されて降りたのは、関東でも有名なイルミネーションのデートスポットだった…



無数の光にキラキラ光る電飾 
 


「凄い」 



私は思わず感嘆の声を漏らしていた…



「愛奈を連れて来たかったんだ。一緒に住んでた時には、どこにも連れて行ってあげられなかったから…」



そう言うと拓は、こっちに来てと私の手を引いた 



自然と繋がれた手に戸惑ってしまう…



子供のようにはしゃいで屈託なく笑う所が、昔の拓のままだなと思った…



子供みたいと笑う私に、拓はもう子供じゃないよと笑って言った



でも私の中の拓は、5年前の拓のままだ…



私は複雑な気持ちになった…



2人でイルミネーションの道を歩くと、《2人の思いが叶う恋人の聖地》と書かれた写真スポットがある



拓は一緒に撮ろうと私を誘うが、私は複雑な気持ちで写真なんか撮れない…



私は撮れないよ…と自信なさげに断って躊躇したり…



「僕の写メだけで撮るから大丈夫」 



そう笑って私達は2人で写メを撮る事になった



昔なら素直に喜べたのに…



こんな気持ちのまま笑顔で写真なんか撮れない…



私は終始複雑な気持ちだ



二人で写真を撮った私達は長い長い光の道をずっと歩いた



もう少しで道が途切れる、全て見終わる頃…



「愛奈は今欲しい物ないの?」



不意に拓に訊ねられた…



どうしてそんな事を聞くんだろう?



私は不思議に思った



「欲しい物は特にないかな…」



買いたいものがあれば自分で買えるし…?



私はどこかで聞いたようなセリフを口にする…



「愛奈は昔と変わらないんだね」



拓はクスッと笑って複雑そうに苦笑した



🎵雪の降る夜は〜🎵 



拓が歌い始める



久しぶりに聴いた拓の歌声



私の大好きだった歌声だ



気付くと私の目から一筋の涙がこぼれ落ちていた



「愛奈…」



私の涙を見て拓が焦ったように私に近付く…



「ごめん…久しぶりに聴いたから何か涙出ちゃった…」



私は焦ったように右手で涙を拭った…