30歳、年下わんこに愛されています


 光は私の体に優しくキスを落としていく。

 その手付きはなんだか慣れて、あっという間で。
 恥ずかしいとは感じさせる暇がなかった。

 心が何かを思い出しそうで、でも思い出したくなくて、ぎゅっと目を瞑る。

 彼は、5歳年下。
 いつも挨拶をするだけの、仲良くもないただの職場の後輩。
 朔に見せるはずだった下着。

 ――こんな関係になっていいはずがない。
 それでも、触れ合う温もりが、心の痛みをやわらげていく。

 光の手は優しくて、どこまでも私を思いやるようだった。
 まるでそれは、本当に愛されているかのようで。
 指先が触れるたび、息をするのを忘れそうになった。

 「俺がいます。沙良さんは1人じゃない」

 そんな言葉に、気がつけば涙が溢れていた。
 ただ、今だけは何も考えたくなかった。

 誰かを想う苦しさも、過去の痛みも、全部この夜に溶けてしまえばいいと願った。