終わらない物語を君へ

「……馬鹿にしてる?」

 みどりは、静かに言った。

 湊は一瞬だけ目を細めて、それから、意地悪そうにくすりと笑った。

「そう聞こえた?」

 でも、その笑顔を見るのは、これが初めてだった。

 みどりは何も言わず、くしゃくしゃになった紙を受け取る。
 丁寧に広げ、折り目を伸ばす。

 何度も触ったせいで、紙は少し柔らかくなっていた。

 そして、スマホを取り出す。

「ほら」

 画面を見せる。

「もう登録したから」

 一瞬、湊の表情が止まった。

 ほんの一瞬。
 でも、確かに。

「……は?」

「だから」

 みどりは紙を軽く振った。

「それ、もういらない」

 湊は言葉を失ったまま、画面とみどりを交互に見る。

「捨ててもいいし、また丸めてもいいし」

 少しだけ、口角が上がる。

「私の中には、もうあるから」

 数秒の沈黙。

 教室のざわめきが、やけに遠い。

 やがて湊は、小さく息を吐いた。

「……参ったな」

 そう言って、頭をかく。

 そして、照れ隠しみたいに言った。

「ほんと、可愛くねぇ」

 みどりは、答えなかった。

 でも。

 その言葉が、少しだけ嬉しかった。