終わらない物語を君へ

 結局、連絡はできないまま、数日が過ぎた。

 そして、あの日と同じ講義。

 みどりが席に着いてしばらくしてからだった。

 ——どかっ。

 乱暴な音とともに、隣に誰かが座る。

 顔を上げなくても分かった。

 湊だ。

 黒いパーカーも、無愛想な空気も、何も変わっていない。
 けれど、こちらを見ることはなく、まるで初めて会ったみたいに、ただ前を向いていた。

 先に耐えきれなくなったのは、みどりだった。

「ねぇ」

 声をかけると、悠真はちらりとだけ視線を寄こす。

 みどりは、カバンから一枚の紙を取り出した。
 何度も折って、何度も開いた、あの紙。

「これ、捨てられないんだけど」

 紙を揺らしながら、続ける。

「どうすれっていうのよ」

 一瞬、湊の動きが止まった。

「……まだ持ってたのかよ」

 低い声。

「捨てたと思ってた」

「捨てられないから困ってんの」

 思っていたより、声が強くなる。