終わらない物語を君へ

「……蓮は、私が変わっていくのが、寂しくないの?」

 問いかけた瞬間、自分でも驚いた。

 蓮は少しだけ目を伏せてから、ゆっくりと答える。

「寂しくないと言ったら、嘘になる」

 でも、と続ける。

「それでも、みどりが笑ってるなら」

 そう言って、蓮はいつものように微笑んだ。

「僕は、平気だよ」

 ——ずるい。

 こんなふうに言われたら、何も選べなくなる。

「私は。自分が自分じゃなくなるみたいで怖い」

 みどりの声は、思っていたよりも小さく震えていた。

 蓮はすぐには答えなかった。
 一度、息を整えるように視線を落としてから、静かに口を開く。

 「変わってしまっても、みどりはみどりなんだ」

 言い聞かせるようでも、慰めるようでもない。ゆっくりと、はっきりと。

 「僕はずっと、みどりの隣にいたい」

 ——選ばなくても、いい。
 迷っていても、いい。

 それでも、ここにいる。

 みどりは何も言えなかった。
 ただ胸の奥で、温かいものと痛いものが、同時に広がっていく。

 強く求められたら、流されることができた。      
 引き止められたら、罪悪感を理由に留まれたのに。

 優しさは、ときどき残酷で、そんなことを考えている私はやっぱり浅はかで弱い人間だ。

 自分で選ばなければならない。
 その覚悟が、私にはまだない。
 みどりは、握りしめていた手を、そっと緩めた。

 ポケットの中で、あの紙が、かすかに擦れる。

 まだ、送っていない。
 でも、確かにここにある。

 みどりの世界は、静かに、確実に、色付き始めていた。