終わらない物語を君へ

 結衣はドアノブに手をかけたまま、ふと思い出したように振り返った。

「……あの」

「なに?」

 少しだけ言いにくそうに、でも目は逸らさずに言う。

「時間が合う時は、私も……」

 一瞬、言葉を探す間があって。

「みどりさんと一緒に、ご飯食べたいです」

 休憩室の空気が、わずかに止まる。

「同じ大学の後輩ですし」

 そう付け足して、結衣は小さく笑った。

 みどりは驚いて、少し言葉に詰まる。

「……私でいいの?」

「はい」

 即答だった。

「私、みどりさんがいいです」

 時々、この真っ直ぐな瞳に、吸い込まれそうになる。

「でも、私はぶかれてるんで、みどりさんに迷惑かけるかも」

 その言葉を聞いて、胸の奥で、何かがほどける音がした。

「私で、よければ」

「はい!」

 結衣の声が、ぱっと明るくなる。

 ドアが閉まり、休憩室にはまた静けさが戻った。