終わらない物語を君へ

 バイトの休憩室は、いつもより少し静かだった。
 冷蔵庫のモーター音と、誰かが立てる紙コップの音だけが響いている。

 みどりは紙コップの縁を指でなぞりながら、昼の出来事を結衣にぽつりぽつりと話した。

 学食のこと。
 先輩たちの視線。
 隣に座った、ぶっきらぼうな同い年の男の子のこと。

 結衣は途中で口を挟まなかった。
 ただ、時々小さく頷きながら聞いている。

「……それでさ」

 みどりは、ポケットから折りたたんだ紙を取り出した。
 何度も触ったせいで、角が少し柔らかくなっている。

「これ、もらった」

 結衣が覗き込む。

「LINE?」

「うん」

「へえ……」

 一瞬だけ、結衣の目が細くなった。
 でもすぐに、いつもの柔らかい笑顔に戻る。

「優しい人ですね」

 その一言に、みどりは少しだけ肩の力が抜けた。


「……そうかな」

「うん。たぶん、相当」

 結衣はストローを噛みながら続ける。

「だってさ、助けて、連絡先渡して、それで『無理ならいい』って言える人、なかなかいないですよ」

 みどりは返事をしなかった。
 代わりに、紙をもう一度折りたたす。