終わらない物語を君へ

 湊は最後まで何も言わず、ラーメンを食べきった。
 そして、器を返却口に置いて戻ってきて、また自然と隣に座った。みどりが食べ終わるのを待っているかのようだった。
 
みどりも遅れて食べ終わると立ち上がり、トレーを片付ける。

 その帰り道だった。

「なあ」

 ふいに、呼ばれる。

「……なに?」

 湊は立ち止まったまま、ポケットを探り、折りたたんだ紙を一枚取り出した。そしてなにやら持っていたペンで書き始めた。それを、直接手渡さず、テーブルの上に置く。

「お前、いつも一人で食べてんの?」

 責めるでもなく、探るでもなく。
 ただ事実を確認するみたいな声。

「……うん」

「そっか」

 それ以上、踏み込んでこない。

 湊は一拍置いてから言った。

「気が向いたら連絡して」

 それだけ。

 告白でも、約束でもない。

「別に、無理ならいいから」

 断られても平気そうな言い方で、そう付け足して、先に歩き出した。

 残されたみどりは、しばらくその場で動けなかった。

 テーブルの上の紙に、目を落とす。

 そこには名前と、手書きのLINE ID。

 強制ではない、ぶっきらぼうな中にも優しさを感じる。

 ポケットに紙をしまいながら、みどりは思った。

 不思議と、嫌じゃない。

 その日の夜。
 ベッドの上で、スマホを握りしめたまま、
 みどりは何度も画面を点けては消した。

 まだ、送らない。

 ……でも、捨てることもできなかった。