終わらない物語を君へ

「……今日みたいな日、ずっと続けばいいのにな」
 つい口から漏れたその一言に、
 蓮は一瞬だけ、何かをこらえるように目を伏せた。

 「続くよ。僕が、隣にいる限り」

 夜風がふたりの間をすり抜けていった。
 遠くで踏切の音が鳴り、その音にかき消されるように、みどりの心臓がどくんと跳ねた。

 ずっとここにいてほしい。
 蓮はいつまでここにいられるの?
 そんな言葉が喉まで上がって、そっと飲み込む。
 ――口にしたら、何かが壊れてしまいそうで。

 「……ねぇ、蓮」
 みどりが小さく呼ぶ。
 でも、続く言葉が見つからなかった。

 蓮は少しだけ笑って、空を見上げた。
 「夜、きれいだね。……こうして歩くの、なんか懐かしい気がする」

 「懐かしい?」
 「うん。……前にも、こんなふうに君と歩いたような気がする」

 「……夢の話?」
 みどりが冗談めかして笑うと、蓮は何も言わずに微笑んだ。
 その横顔に、ほんの一瞬だけ、哀しさが差した気がした。

 ――まるで、遠くへ行ってしまう人みたいに。

 「……帰ろっか」
 みどりが言うと、蓮は「うん」と短く頷いた。
 並んで歩く二人の影が、街灯の下でひとつに重なった。