終わらない物語を君へ

 蓮は棚の隅で、真剣な表情で小さなチャームを見ていた。
 その横顔を見つめながら、みどりは思う。

 ――あぁ、こういう時間が“青春”なんだ。

 過ぎたと思っていたものを、もう一度味わえるなんて、思ってもみなかった。

 私には必要ないと思っていたのに、こうしている時間がこんなにも幸せだなんて。

 (もう、“必要ない”だなんて、言えないや。)

 店を出ると、夕暮れの風が頬を撫でた。
 街の灯りが少しずつ点き始め、ショーウィンドウのガラスが淡く光る。

 ふと振り返ると、さっきのコンパクトミラーがまだそこにあった。
 照明を受けて、星屑のようにきらめいている。

 「……きれい」
 思わずこぼれたみどりの声に、蓮が穏やかに微笑んだ。

 「みどりも、あんなふうに光ってたよ」
 その言葉に、胸がまた少し高鳴る。

 ――ほんの少しの時間なのに、
 世界がやわらかく色づいて見えた。