終わらない物語を君へ

 夜の道を、2人で並んで歩く。
 少し離れたり、ふとした拍子に近づいたり。
 そのたびに、肩が触れそうになって――どちらも何も言わなかった。

 街灯の光が、彼女の頬をほんのり照らしている。
 その頬が赤いのは、夜風のせいなのか、それとも――

(……かわいい)

 胸の奥がじんわりと温かくなる。

 これは、小説の設定なのかもしれない。
 彼女が“ミドリ”という名前だから、そう思っているだけなのかもしれない。

 でも、それでも。

 今、隣にいるこの“みどり”がいい。
 笑った顔も、拗ねた声も、ぜんぶがいい。

(――君がいいんだ。小説の中じゃなく、今、ここにいる君が)

 白い吐息が、夜の冷たい空気に溶けていった。