終わらない物語を君へ


 蓮は少し首をかしげて、低く落ち着いた声で言った。

「ずっと会いたかったよ、みどり」

 その言葉に、胸がドキドキと跳ねる。
 ページの中だけで知っていた彼が、今、目の前で生きている――

 嘘、嘘でしょ。
 とうとう幻覚まで見えるようになった?
 人生拗らせた末にここまでくるともう終わりだ。

 そんな風に思った矢先、私の気持ちなんてお見通しというように彼は笑った。

「……大丈夫。夢じゃないよ」

 ぽん、と頭に乗せられた蓮の手の温もりが、胸の奥に染み込んでいく。

「……本当、なの?」

「弥生 蓮。みどりが名前をくれたんだろ?いつも僕を見つめる君に、一度でいいから会いたいと願っていた。そうしたら、ここにいた」

 声が小さく震える私に、彼はにっこり笑った。
 不意に手が伸びてきて、気づけば抱きしめられていた。

「うん。夢みたいだろうけど、夢じゃないんだな。本当に…最高の気分だ…」

 彼は噛み締めるように言って、私の肩に顔を埋めた。

 みどりの心臓は、胸の奥でぎゅっと締めつけられる。

「なにこれ…本当に…現実なの?」
 みどりは振り絞るような声で聞き返した。

「そうみたいだね」

 その言葉に、胸の奥がじんわり熱くなる。
 目の前の彼は、ページの中の完璧な彼そのものだった。

 いつもと違うのは、蓮が今はここにいて、私の目を見て微笑んでいる。
 手を伸ばせば、触れられる距離にいるということだ。

――夢みたいで、夢じゃない。
 それが今の、私のすべての気持ちだった。