終わらない物語を君へ

 卵コーナーで、蓮は慎重に一つずつ手に取った。

「これにしようかな……でも、どれがいいんだ?」

 卵の箱をひっくり返さないように、そっと握る手に力が入りすぎて、少し震えている。

「ちょっと…そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
 みどりは優しく声をかけ、笑った。

 次に鶏肉を選ぶときも、蓮は箱の中を覗き込みながら首をかしげた。
「うわ……同じ鶏肉でも、部位によって全然違うんだ」

 柔らかそうな胸肉、ぷりっとしたもも肉。どれも美味しそうで、目移りしてしまう。

 玉ねぎのコーナーでは、丸くて大きな玉ねぎを手に取った瞬間、思わず手から滑り落ちた。

「わっ!」

 みどりがすぐに反応して、玉ねぎを受け止める。
「大丈夫?」

 蓮は顔を赤らめながらも、はにかんだ笑みを浮かべた。
「うん……ごめん、初めてだからちょっと緊張しちゃった」

 その照れた笑顔に、みどりの胸がふっと温かくなる。
(少しおっちょこちょいなところも可愛い…)

 調味料の棚に立つ蓮は、ケチャップを手に取り、色んな種類を見比べて首を傾げる。

「どれも美味しそう……。味が違うんだろうな」
 みどりは少し笑いながら、
「いつも使ってるのはこれね」と一本のボトルを指さした。

 カートの中には、少しずつオムライスの材料が並び始めている。

 卵に鶏肉、牛乳、バター。
 ――いつもなら一人では持て余してしまう量。

 今まではどんなに重くても自分で持って帰っていたし、“これを買っても使いきれない”と思って諦めることも多かった。

 でも、今日は違う。
 “蓮と食べる”と思うと、どれも欲しくなる。

 ふたり分って、こんなに多いんだ。
 その重みさえ、なんだか嬉しい。