終わらない物語を君へ

 アルバイトを始めて数週間。

 蓮は、行きと帰りの道をすっかり覚えた。

 レジの操作も少しずつ慣れてきて、常連の客に笑いかけられることもある。

 その笑顔があまりにも自然で、優しくて――最近では「彼、感じいいね」「かっこいい店員さんがいる!」と蓮目当てに来るお客さんまで出てきた。

 そんな様子を見ながら、みどりは胸の奥がくすぐったくなる。

(なんか、すっかり人気者じゃない……)

 誇らしいような、でも少しだけ落ち着かないような、不思議な気持ち。

「しばらくは、みどりと同じシフトで入れてもらうことにしたんだ」
 そう言った蓮の声は、どこか嬉しそうだった。


 給料日も、もうすぐ。

「まず最初にケータイを買う!買ったら、連絡が取れるようになる。そうしたら、みどりが大学に行っている間もバイトできるね」

 そう言って笑う蓮の横顔に、みどりの胸がふわりと温かくなる。

 そういえば、この前。
 みどりがスマホを取り出して母にLINEを送っていた時、蓮が、興味津々な目で画面をのぞき込んできたっけ。

「みどり、今話してるの?画面の中の人と?」
「そう。文字でね。こうやって送るの。どこにいても話すことができるんだよ」
 そう教えると、彼は子どもみたいに目を輝かせた。

「へぇ……僕も、それ、やってみたい。みどりとどこにいても話ができるなんて、最高だね」

 その言葉を思い出して、みどりは思わず笑ってしまう。
(ほんと、全部が初めてなんだ)

 ――なに、この感じ。
 尊い。尊すぎる。
 まっすぐで、嘘がなくて、全部が新鮮で。

 蓮はただ、嬉しそうに話しているだけ。
 でもその無邪気な笑顔に、どうしてこんなにも心を揺らされるんだろう。