終わらない物語を君へ

 

「違うって。あれは……」

 言いかけて、言葉を選ぶ。

「デレてたんじゃなくて、断ってただけ」

 みどりは、ちらりとだけこちらを見る。

「……え?何を?」

「連絡先教えてって言われたから。大切な人がいるって、ちゃんと言った」

 そう告げると、みどりの肩が、ほんの少しだけ緩んだ。

 それでも、すぐにはこちらを見ない。

「……ふーん」

 短い返事。
 でも、シャツの裾をつまむ指は、まだ離れていなかった。

 その小さな距離が、嬉しい。

 みどりがそっぽを向いたまま、小さく言う。

「……あんまり色々喋ると、バレるから心配になっただけ。っていうか、連絡先聞かれて、やっぱりデレデレしてたんじゃん!」

 これだからイケメンは困る、なんてみどりがブツブツ1人で呟くから、蓮は思わず笑ってしまいそうになるのをこらえた。

「してないよ。デレる相手、ちゃんと決まってるから」

 みどりが、ぴくっと反応する。

「な、なにそれ」

「内緒」

 そう言うと、みどりはさらにぷいっと顔を背けた。

 頬が少し、赤い。

 その横顔を見ながら、蓮は思った。

 あんなに堂々としてて、かっこよく輝いていたのに。
 こんなふうに、少し不機嫌になったり、素直じゃない言葉を投げてきたり。

 その全部が、たまらなく可愛くて。

 ――この人が、僕の大切な人なんだ。

 改めてそう思いながら、蓮はそっと、彼女の隣に立ち続けていた。