終わらない物語を君へ

 ふと、カウンター越しに視線を感じた。

 振り向くと、制服姿の女子高生が二人、こちらをちらりと見て、顔を見合わせている。
 やがて意を決したように、一人が声をかけてきた。

「あの……」

 少し緊張した様子で、もじもじと指先を動かしながら。

「付き合ってる人、いますか?」

 一瞬、驚いた。
 けれど、不思議と迷いはなかった。

 蓮は小さく息を吸って、穏やかに笑う。

「いないよ」

 女子高生たちの顔が、ぱっと明るくなる。

「え、ほんとですか?連絡先とか、聞いてもいいですか?」

 その反応を見てから、蓮は続けた。

「でも――大切な人は、いるんだ。ごめんね」

 一拍置いて。

 今度は、女子高生たちが目を丸くする番だった。

「えー!なにそれ!」
「どんな人なんですか?」

 蓮は思わず、カウンターの向こうを見た。

 忙しそうに動きながらも、誰に対しても丁寧で、優しくて、ここにいる誰よりも輝いている人。

 胸の奥が、あたたかくなる。

「……ちゃんと自分の足で立ってて、人に優しくて、気づいたら、目で追ってしまう人」

 それだけ言って、少し照れたように笑った。


 女子高生たちは一瞬きょとんとしてから、
 顔を見合わせて、小さく声をそろえた。

「……それ、絶対好きじゃん」

 蓮は否定しなかった。

 ただ、もう一度だけ、カウンターの向こうを見る。

 こんなふうに、誰かを迷いなく「大切」と言えることが、こんなにも誇らしいなんて。

 その事実を、胸にそっと刻みながら。