終わらない物語を君へ

 何度も夢に見たあの人が――
 今、私のすぐ隣で寝息を立てている。

 信じられないのに、頬にかかる吐息の温かさが、これが夢じゃないと告げていた。

 思わず体がこわばり、息をひそめる。
 目を見開いてじっと見つめると、蓮の寝顔は思い描いていたままの完璧さで、でも少しだけ無防備な表情をしていた。

「……うそ、どうしよう、これ、本当に現実?」

 小さな声でつぶやく。
 心臓がバクバクして、手のひらまで熱い。
 胸の奥がぎゅっと締めつけられるようで、頭の中が真っ白になった。

 ページの向こうの世界では、いつでも会えたはずなのに――
 まさか、本当に隣で息をしているなんて。
 胸の奥に、何とも言えないときめきと戸惑いが渦のように広がっていく。

 そのとき、蓮のまぶたがゆっくりと開いた。
 濃い瞳が私を捉え、低く落ち着いた声が耳元で響く。

「……おはよう」

 その声に、体中の血が一気に駆け巡った。
 息が止まりそうで、思わず手で口元を押さえる。

 彼はただ、柔らかく微笑んでいるだけなのに――それだけで心臓がぎゅっとなる。

「……え、えっと……おはよう……?」
 思わずかすれた声で返す。
 現実なのに、夢みたいで、どう反応していいのかわからなかった。

 蓮は何も言わず、ただ少しだけ頭をこちらに傾ける。
 その仕草ひとつで、胸の奥が熱くなり、視線をそらせなくなった。

 信じられない現実に、私の心はまだ追いついていなかった。