終わらない物語を君へ

 バイトの後、1人でサイダーを飲んで、小説を読む時間が好きだった。

 シュワシュワと弾ける炭酸の音、ページをめくる手の感触、静かな夜――それがみどりにとってのささやかな癒やしだった。

 でも、今は隣に蓮がいる。
 1人じゃないんだ。

 しばらくして、蓮のまぶたがゆっくりと閉じられ、静かな呼吸が部屋に広がった。

 ソファでうとうとしていた彼は、自然と体をみどりの方に傾け、そっと肩に頭を乗せてきた。

 驚きとともに、みどりの胸は小さく高鳴る。 

 温かくて、頼もしくて、でもどこか幼さも残る感触。
 1日の疲れをすべて包み込むような、そんな柔らかさだった。

(……こうして一緒にいられるだけで、幸せだなぁ)

 そっと背もたれに体を預け、みどりは隣で眠る蓮を静かに見守った。

 小説も、サイダーも、今はもう必要なかった。

 この二人だけの静かな時間が、心の奥にじんわりと染み渡っていった。