終わらない物語を君へ

 結衣は少し勇気を振り絞るように、みどりの目を見つめた。

「みどりさん……お友達になってもらえませんか?」

 その言葉に、みどりは言葉を詰まらせる。

(こんな私が……また、誰かと繋がっていいのだろうか)

 胸の奥に、かすかな痛みが広がる。

 何か大切なものができると、失ったときに、きっとまた苦しくなる。
 そんな怖さが、心のどこかにまだ残っていた。

 けれど、結衣はまっすぐな瞳でみどりを見つめ、言葉を重ねた。

「私、誰かに“友達になってほしい”なんて言ったの、初めてなんです」

 少し震えた声。でも、その中には確かな想いがこもっていた。

「みどりさんに大切にしてもらえるなら……わたしは、もっとみどりさんを大切にします!」

 その言葉に、みどりの胸がきゅっと締めつけられる。
 ――まっすぐで、まぶしいほどの純粋さ。

 気づけば、みどりは小さく笑っていた。

「……そんなふうに言われたの、私も初めてだよ」
 そして、ゆっくりとうなずく。

「ありがとう"結衣さん"……これから、よろしくね」

 結衣の顔がぱっと明るくなり、嬉しそうに笑う。

 その笑顔に、みどりの心の中で、凍っていた何かが少しずつ溶けていくのを感じた。

 その光景を少し離れた場所から見ていた蓮は、穏やかに目を細める。
 まるで、何かを確かめるように。

(よかったね、みどり)

 その視線はどこまでも優しくて――。
 こうして、みどりに初めて“向き合える友達”ができた。
 心の奥で、小さな春がそっと芽吹いた瞬間だった。