終わらない物語を君へ

 気づけば、頭に手を伸ばしていた。

 ふわりと、やわらかい髪。

「……っ!」

 みどりがびくっと肩を揺らす。

「な、なにするの」

「ごめん。嫌だった?」

 慌てて手を引っ込めると、みどりは一瞬だけこちらを見て、すぐに視線を逸らした。

「……別に」

 それだけ言って、パーカーの袖をぎゅっと握る。

 その仕草に、胸の奥がじんわり温かくなる。

 店内のざわめきが、少し遠くに感じた。

「……そろそろ、帰ろっか」

 自分でも驚くほど、自然にその言葉が出た。

 “帰ろうか”。

 ただそれだけの言葉なのに、誰かに向けて、隣に並んで言えることが、こんなにも嬉しいなんて。

「……うん」

 短く返事をして、みどりが立ち上がる。

 並んで歩き出したとき、肩がほんの少し触れた。

 それだけで、心臓が忙しくなる。

 その小さな幸せを、蓮は噛み締めるように歩いた。