終わらない物語を君へ

 ふわふわの卵の上に、つややかなケチャップがとろりとかかっていた。
 その上に、店員がスプーンで軽く筋を入れると、黄身がとろりと流れ出して、
 中のケチャップライスと混ざり合う。

 その光景を、蓮はまるで魔法でも見たかのように見つめていた。

「……これ、すごいね。卵、光ってる」

「オムライスって言うんだよ。中にご飯が入ってるの」

 一口すくって、恐る恐る口に運ぶ。

 ――ふわっ。

 やわらかい卵が舌の上でとろけ、ケチャップの甘酸っぱさと、バターの香ばしさがふわっと広がった。

 思わず、目を見開く。

「……おいしい!ふわふわだ!」
 思わずこぼれたその一言に、みどりは笑った。
「できたてだからね」

 蓮は黙って、もうひと口、またひと口と食べ進める。
そのうち夢中でスプーンを動かしていた。

 頬がほんのり赤くなり、いつの間にか表情がやわらいでいる。

「これ、毎日でも食べられそうだ」

 満足そうに笑う蓮に、みどりは思わず笑ってしまった。

「じゃあ、今度家で作ってみる?」

「え!? みどり、作れるの!?」

 目を丸くして、子どものように前のめりになる。
 その素直な反応に、みどりの胸が少しだけ温かくなった。

「作れるよ。……こんなに美味しくはできないかもしれないけど」

「食べたい! 作ってみたい! オムライス!」


 自分の食べたいものを、自分で選ぶ。
 それだけのことが、どうしてこんなに嬉しいんだろう。

 この世界は、なんて自由なんだろう。
 そして、なんて温かいんだろう。

 ――“選ぶ”ということは、“生きる”ということなんだ。

 そんなことを、初めて知った気がした。