終わらない物語を君へ

 何をしてもいい。
 ――蓮は、その言葉の意味を、少しずつ実感している気がしていた。

 朝、みどりと街へ出たとき、蓮は胸が高鳴っていた。

 人が行き交う音。ざわめき。風の匂い。

 本の中では、すべて「描かれているもの」だった。
 けれど今は、肌で感じることができる。

 服屋の前で、蓮は足を止めた。
 並んだマネキンの服を見て思う。
 ――服って、こんなに種類があるんだな。

 いつもはチェックのシャツに、紺のパンツ。
 「設定」で決められた自分の衣装。

 でも今日は、誰も決めない。
 どんな色を選んでも、誰も何も言わない。

 鏡の前で白いシャツを当ててみる。
 シンプルなのに、なんだか少しだけ“違う自分”になれる気がした。

 みどりが「似合ってるよ」と微笑む。
 その一言に、胸の奥がじんわりと温かくなる。