終わらない物語を君へ

 蓮は少し遠くを見るようにして、続けた。

「でも、みどりはこれからどうにだってなれる」
 柔らかな声が、風に溶けていく。

「髪の毛だって、短くもできるし、長いまま巻くことだってできる。男の子みたいな格好だってできるし、スカートだって履ける。」

 蓮の手が優しくみどりの頭を撫でる。

「僕がいたのは、決められた世界だったけれど、ここは自分で決められる。そういう世界でしょ?」

 まっすぐな瞳に、みどりは息をのんだ。

 “決められた世界”
 その言葉に、蓮がいた小説の中の世界を思い出す。

 台詞も、服も、行動さえも、すべてが脚本に縛られていた世界。

「だから、みどりは変われるよ。自分の思うように」

 そう言って笑う蓮の横顔が、光に包まれて見えた。

「……変われる、のかな」
 ぽつりと呟いた声は、自分でも驚くほど弱々しかった。

 眩しく輝く、誰が見てもかっこいい。
 そんな蓮の隣を、堂々と歩ける自分に。
 ――本当になれるのだろうか。