終わらない物語を君へ

「もぅ……! 本当にかっこよすぎる!」

 夕飯を食べて、お風呂にも入った。
 私はいつもと同じようにベッドに座りながら小説を開いていた。

 心臓がドクドクして、手のひらまでじんわり熱くなる。
 ページの向こうの彼は、完璧すぎて、現実には存在しないはずなのに――どうしてこんなに胸が高鳴るんだろう。

 目を細めて笑う姿。
 真剣に誰かを守ろうとする横顔。
 ちょっと不器用で、でも優しい手。

 目を閉じればまるで隣にいるように思い浮かんだ。
 そのすべてが、私の理想で、私があの日諦めたときめきが、ぎっしりと詰まっていた。

 ページをめくるたび、心があたたかく満たされていく。

「……ずっと、あなただけいてくれればいい」

 心の中で叫んだ声が、部屋の静けさに溶けていく。

 ベッドの上で小説を抱きしめ、夢中でページを追いかけた。

「レン……もし、こっちの世界にいるなら――」

 ふと、思いついたように口にする。

「弥生 蓮(やよい れん)って名前はどう?」

 自分で言いながら、少し笑ってしまった。

 お気に入りの登場人物に“本当の名前”をつけた気がして、胸の奥がふわりと温かくなる。