終わらない物語を君へ

 買い物袋を手に、二人は並んで駅へ向かって歩いていた。
 休日の街はにぎやかで、通りを行く人たちの笑い声があちこちから聞こえる。

 そんな中――ふいに、後ろからひそひそとした声が耳に届いた。

「ねぇ、今の人見た? やばくない? 芸能人?」
「顔小さすぎ! あれ絶対モデルでしょ」

 蓮のことを見て、女子たちが騒いでいる。
 笑いながらすれ違っていくその視線の先は、まっすぐ蓮に向いていた。

 みどりは思わず隣を見る。
 人混みの中でも目を引く――そんな存在。
 それが、自分のすぐ隣を歩いているなんて、まだどこか信じられなかった。

 けれど次の瞬間、耳に刺さるような言葉が聞こえた。

「ていうか、隣の子、彼女? え、ないでしょ、それは」
「うん、釣り合ってなさすぎ」

 胸の奥がきゅっと痛む。
 思わず下を向き、足元を見つめる。

 通り沿いのショップのガラスに、二人の姿が映った。
 そこに映る自分――
 一つに束ねた髪、メガネ、ダボっとしたTシャツにジーパン。

 隣に立つ蓮の整った姿と並ぶと、どう見ても“似合っていない”。

(……さすがに、ないよね)

 苦笑いを浮かべながら、みどりは小さくため息をついた。
 胸の奥に、チクリとした痛みが広がる。

 ――それでも、隣を歩く蓮は、何も気づかないように柔らかく笑っていた。
 まるで、周りのざわめきなんて、存在しないかのように。