終わらない物語を君へ

 デパートまでの、歩き慣れた道を歩く。
 晴れた空、風に揺れる街路樹。
 いつもなら何気なく通り過ぎる景色が、今日はやけに鮮やかに見えた。

 ――蓮が隣にいる、それだけで。

 みどりの歩幅に合わせて、蓮が静かに並んで歩く。

 そんな時ふと頭をよぎった。
 よくあるファンタジーの一幕。
 “外に出ると、誰にも見えていなかった”という展開。
 もしかして、蓮は、私の頭の中で作り上げた幻なのでは?私にしか見えていないのではないか?

 そんな不安を抱きながら周囲を見渡すと、
 すれ違う人々が自然に蓮を避け、視線を向けていた。
 ――ちゃんと、見えている。

 胸の奥で、安堵と戸惑いが入り混じる。
 本当に、彼は“ここ”にいるんだ。

 その時、風が頬をなでた。
 蓮の指が、みどりの手にそっと触れた。
 そのまま、優しく包み込むように繋がる。

「っ……な、何してるの!?」

 みどりは顔を真っ赤にして、慌てて手を振り払った。
 鼓動が一気に跳ね上がる。まるで空気まで熱を帯びたようだ。

 そんなみどりを見て、蓮は不思議そうに首をかしげる。

「何って……デートの時は、手を繋ぐものでしょ?」

「で、デートって……!?」

 みどりは言葉を詰まらせ、視線を泳がせた。
 彼の世界では、きっと当たり前のこと。
 だけど、現実の世界では――そんなに単純じゃない。

「いや、あなたの世界ではそうだったかもしれないけど、ここではそんな単純じゃないの!」

 思わず早口でまくしたてる。
 けれど、蓮はどこか楽しそうに笑って、少しだけ顔を近づけた。

「じゃあ、こっちの世界のルール、ちゃんと教えて?」

 その声音が、やけに甘く響いて。
 みどりの心臓は、ますます落ち着かなくなる。