終わらない物語を君へ

 あんなに一緒に眠ることを嫌がっていたのに、みどりはすぐに寝息を立ててしまった。
 バタバタと一日中動いていたから、きっと疲れたんだろう。

 静かな寝顔を見つめながら、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 まつげ、長いな。
 シャンプーの匂いがふわりと香って、くすぐったいような、落ち着くような気持ちになる。

 そっと肩を引き寄せると、みどりの体温が伝わってくる。
 ……ああ、これが人のぬくもりってやつか。

 胸のあたりがぎゅっと痛い。
 どうしてだろう。
 この痛みの正体を、たぶん僕は知っている。

 ――愛しい。

 それが、きっとこの感情の名前。
 彼女は嫌がるかもしれないけれど、また明日も、明後日も、こうして隣で眠りたい。

 ……でも。

 本当に僕は、この世界にいるんだろうか。
 もし、目を閉じたら――そのまま消えていなくなるかもしれない。

 だから今夜はまだ、眠りたくない。
 彼女の寝息を聞きながら、この時間を刻みつける。
 みどりのぬくもりが、僕をこの世界につなぎとめてくれている。

 外では風がやさしく木々を揺らしていた。
 その音にまぎれるように、蓮はもう一度、彼女の方へそっと顔を向けた。

 ほんの少し近づいて、息が混ざるくらいの距離。

(おやすみ、みどり)

 そう小さく囁いた。