終わらない物語を君へ

 蓮はそっと部屋に入ってきた。
 私の家の中で1番大きいスエットをきちんと着て、少し首をかしげながらみどりを見つめる。

「……どうかな?」
 その声に、みどりの胸がぎゅっと跳ねる。

 丈はやっぱり短くて、足首が見えている。

 足首が見える丈のスエット姿は、まだ少し濡れた髪と相まって、どこか愛らしく見えた。

 思わずみどりは視線を逸らし、頬を赤くした。

「……うん、ちょっと短いけど、ごめんね」

 蓮は少し安心したように笑う。
 その笑顔ひとつで、心臓がバクンと跳ね、胸の奥が熱くなる。

「……そう?平気だよ」

 首をかしげるその仕草も、妄想の中の蓮と同じで、みどりの鼓動をさらに速めた。

(明日、ちゃんと丈の合うのを買いに行こう……)
 心の中で小さく決意しつつ、息を整える。


「……じゃあ、髪、乾かそうか」
 みどりは軽く声をかけ、ドライヤーを手に取る。

「うん……お願いします」
 蓮は少し照れくさそうに頷く。
 その仕草が可愛くて、みどりの胸がギュッと跳ねる。

 椅子に座った蓮の頭にそっと手を添え、熱くならないようにドライヤーを当てる。

 風が髪に触れるたび、柔らかな香りがふわりと漂い、みどりの心臓はドキドキと高鳴った。

「……なんか気持ちいいかも」

 蓮が小さく微笑む。
 その笑顔を見ながら、みどりは思わず視線を逸らす。

 だって、この状況が、まだ信じられない。

 髪を乾かしながら、みどりは少しずつ櫛で整える。
 濡れた髪が指の間を滑る感触に、心がざわつく。

「……もう少し、上から乾かすね」

 そう言って、頭の上に手を回すと、蓮の頭が自然とみどりの胸に少し近づいた。
 その距離感に、みどりは思わず息を止めてしまう。

「……ありがとう。みどり」

 蓮は安心しきったように微笑む。
 その笑顔に、みどりの胸はますます熱くなる。

 髪が乾ききるまでの数分。

 静かな部屋の中で、風と髪の感触、そして心臓の高鳴りだけが、二人の間に漂っていた。