終わらない物語を君へ

 とりあえずお風呂は終わった。

 ゆっくり湯船に浸かって、体の緊張をほぐした蓮。みどりはドア越しに声をかける。

「ゆっくり湯船につかって、上がったらタオルで体を拭いて、着替えてね」

「うん、わかった」
 扉越しに聞こえる蓮の返事に、みどりは少し安堵した。

 ふぅ、と息をつき、肩の力を抜く。
 やっと一息つける――
 そう思った瞬間、ふと現実に引き戻される。

 みどりの頭の中は、一瞬にして真っ白になる。
 寝る場所、どうする?
 今までみどりの部屋に泊まった人はいない。
 もちろん布団は一つしかなかった。
 男性が目の前に……って、現実すぎてもう考えるだけで胸がドキドキする。

(……私が床で寝るか?)

 頭の中でシミュレーションを繰り返すが、現実のドキドキと焦りで、思考がうまく回らない。

 神様――私は恋愛初心者です。
 レベル1なんです。雑魚キャラです。
 憧れは憧れのままで、好きに妄想できるからいいんですよ。
 急にラスボス戦なんて聞いてないよ。即死するわ!

 そんなことを1人で考えていると、
「みどりー?お風呂って気持ちいいね。ありがとう」
 蓮の声でまた現実に戻される。

(……どうしよう。……ま、まあ、なんとかするしかない)

 心の中でそう自分に言い聞かせながらも、布団の横に立つみどりの胸は、まだドキドキが止まらなかった。